Research Abstract |
超音速ジェットに対してマイクロジェットを噴射することによる騒音低減効果の実証と,騒音低減メカニズムの解明を目的に,詳細な音響場と流れ場の計測,および数値解析を実施してきた.最終年度である本年度はマイクロジェットの噴射口数,噴射口間隔,噴射角等の条件をより広範に変化させ,音響場及び流れ場に対しての影響を調査した.また,マイクロジェット以外の騒音低減手法として,ピエゾ素子によって主ジェットせん断層に非定常擾乱を付与し,騒音低減の可能性を探る基礎的検討を行った.マイクロジェットによって騒音が低減したケースでは,主流とマイクロジェットの質量流量比約1.1%で,最大8dB程度の低減効果を得た.この時の推力損失を数値解析により算出したところ,約1.2%であった.騒音低減量を噴射条件ごとに比較すると,最適な噴射口数や噴射口間隔が存在することがわかった.マイクロジェット流量が多すぎると高周波数騒音の増大が顕著になる傾向が確認された.音響場と流れ場の関連性を探るため,ハイスピードカメラを用いて流れ場を可視化し,得られたシュリーレン画像を解析することで主ジェットせん断層の非定常的挙動について考察した.マイクロジェットなし時には,スクリーチ周波数でのフラッピング運動が支配的であったが,マイクロジェットを噴射した場合には,スクリーチ周波数をはじめ,主ジェットの様々な周波数の振動が抑制されていること,主ジェットの衝撃波構造が乱されていること,等がわかった.更にノズル出口においてジェットせん断層に微小擾乱を付与する実験を実施した.積層型ピエゾ素子の駆動部に振動板を取り付け,振動板の先端部をジェットせん断層外側にあてることにより微小擾乱を付加し,音響場及び流れ場に与える効果を調査した.振動板の幅やノズル出口からの位置,振動周波数等を変化させ,様々な擾乱を与えたが,発生させた擾乱によるジェット騒音の低減効果や流れ場の有意な変化は見られなかった.以上により,マイクロジェット噴射をはじめとする種々のジェット騒音能動抑制手法を検討し,将来の超音速航空エンジンにおける低騒音設計の基盤的な知見を得ることができた。
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