2010 Fiscal Year Annual Research Report
船舶海洋構造物におけるリスク評価と余寿命便益評価に関する基礎的研究
Project/Area Number |
20360391
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
川村 恭己 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (50262407)
|
Keywords | リスク評価 / 構造信頼性 / 余寿命便益 / ライフサイクル構造最適化 |
Research Abstract |
前年度までに、船舶海洋構造物におけるリスクを考慮した余寿命便益評価の考え方について定式化を行った。本年度は、まず第一に、リスク評価のための構造信頼性解析手法の高度化の検討を行った。具体的には、汎用の信頼性解析ソフトウェアNESSUSを導入し、その有効性について検討した。NESSUSにおいては、単に信頼性評価を行うだけでなく、汎用有限要素解析ソフトウェア(Nastran等)とのインターフェースを有し、複雑な構造物のFEM解析を信頼性評価の中に導入することが可能である。本研究では、これらの機能を用い、実船構造の信頼性評価とそれに基づくリスク評価を行うことにより、リスクベース手法を実問題へ適用するための枠組みを提案した。 ところで、現在までの研究から、構造物のリスク評価を行う際には、様々な不確定性をどのように評価するかにより、リスクそのものの値が大きく変化するため、適切なリスク評価が困難である場合があることがわかってきた。そこで本研究では第二に、強度に関するの様々な要素(例えば、初期不整、腐食、工作精度、構造寸法等)の不確定性についてその実態を調査検討し、妥当なリスク評価を行うための確率モデルの構築を行った。 本研究では第三に、リスク評価を用いた構造の評価手法の検討を行うとともに、それを用いた構造及びライフサイクルにおける補修計画の最適化手法の検討を行った。具体的には、バルクキャリアのホールドフレームの構造の違いによるリスクの違いを評価し、優れた構造を検討するだけでなく、それらの構造を寿命中運用していくことを想定して、構造の経年劣化を考慮したライフサイクルのリスク評価を行った。これにより、従来は、構造設計にのみ適用されていた最適化の概念を、寿命中のリスクを指標とすることにより、構造寸法と保守管理計画の両方を設計変数とした新しい構造・保守管理最適化(ライフサイクル構造最適化)の概念を提案した。
|