Research Abstract |
深層ボーリングデータが蓄積されている±岐花崗岩体を対象に選び,本年度は1つの岩体における地表から深部に至る水理構造の全体像の解明に取り組んだ。まず,土岐花崗岩体の谷部,尾根部,小規模な断層,活断層付近,亀裂部,健岩部など,特徴的な地形でのP波(縦波)伝播速度・比抵抗と透水係数のデータを収集し,P波速度・比抵抗と透水係数との関係から実験式を求めた。次に,データの位置や値の不均質性が特に大きい透水係数データを有機的に統合することを試みた。透水係数データのセミバリオラムを計算し,空間的相関構造の異方性を明らかにした。この異方性を考慮し,種々の地球統計学的手法を比較検討した結果,逐次ガウスシミュレーションによれば,地表から深度1kmまでの広範囲の水理構造を高い空間分解能で推定できることがわかった。さらに,上記の[P波速度・比抵抗-透水係数】の相関式を用い,P波速度,比抵抗,および亀裂分布の3次元空間モデルを組み合わせることで,透水係数の空間分布精度を向上させられた。透水性を支配する亀裂の幾何学的な性質に関しては,亀裂面を正方形と近似すれば,一辺220mの亀裂面まで平均透水係数は急増するが,その後では微増傾向となり,ある程度大きな亀裂面であれば,透水性は亀裂数に依存することが示唆された。透水係数の3次元モデルから地下水流れのシミュレーションを行った結果,近接した部分でも卓越するのが下降流,あるいは水平流れと異なり,流動ベクトルの連続性は小さな範囲に限られる,など流れが複雑であることがわかった。この流れモデルと地下水の水質データとを重ね合わせることで,降雨による地表降下流体が岩体内をどのように移動したのか,というパスと移動メカニズムの一部を明らかにできた。
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