Research Abstract |
昨年度に引き続いて土岐花崗岩体を研究対象に選び,1つの岩体における地表から深部に至る水理構造の全体像の解明に取り組んだ。本年度の成果は下記の5点にまとめられる。 1. 岩体全体においてCa^<2+>, Mg^<2+>, Na^+, K^+, Cl^-, SO_4^<2->, HCO_3^-の7つのイオン成分濃度を推定したところ,水質は6つのグループに区分でき,地表から標高-175m程度までグループの分布は複雑であるが,それ以深では水質分布は全領域でほぼ一定になることが明らかになった。 2. 深度方向の透水係数の変化を求めたところ,当地域のリニアメントは水質を区分するようなブロック境界として機能し,断層は遮水性の機能を有していると推測できた。 3. コアサンプルを用いた室内実験では,亀裂面に近いほど浸透率が急増するとともに,浸透率の異方性が顕著に現れ,リニアメントの卓越方向と調和した。よって,岩石サンプル内にも微小クラックが巨視的な卓越亀裂の方向に存在し,水の流れを支配していると考えられる。 4. 深度200mと300m坑道における浸透率の現位置測定の結果,測点から最も近い亀裂が長ければ浸透率が増加し,距離が近いと浸透率は急増するという傾向が概ね見出せた。よって,長い亀裂周辺には微小クラックが多く存在し,透水性の高いゾーンを形成していると考えられる。 5. 200m坑道付近の亀裂分布をGEOFRACによりシミュレーションしたところ,連続性の良い亀裂には分布傾向が明瞭に現れ,急傾斜の亀裂ではNW走向が領域全体に存在し,NE走向も領域を貫通するように分布することが明らかになった。
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