Research Abstract |
本研究は地球統計学的手法を応用し,広域的な地下情報を解析・統合することで,水理地質構造に関する高精度なモデリング手法の開発を目指した。対象地域は前年度と同じく岐阜県東濃地域とし,解析領域を南北8km,東西12km,深度方向に1.5kmと設定した。19地点のボーリング調査による計50,900本の亀裂データと地球統計学的シミュレーション手法(GEOFRAC)によって,対象地域の3次元亀裂分布モデルを前年度までに作成している。 対象地域での透水係数のデータ数は少なく,分布の偏りが大きいために,透水係数の3次元分布は推定できない。そこで,透水係数のデータ点近傍を通るシミュレーション亀裂を抽出し,亀裂面積と透水係数の値を比較したところ正の相関性が見出されたため,この回帰式からシミュレートされた亀裂面に透水係数を与え,サンプルデータを増やした。これにより,対象地域の透水係数分布をクリギングによって推定することが可能となった。次に,透水係数分布モデルとMODFLOWを用いて地下水流動の定常解析を行った。計算によって得られた水頭分布は地形と対応し,実測の水理水頭とも概ね調和したので,シミュレーション結果の妥当性が確かめられた。 結果の一つである地下水流動モデルからは,月吉断層に対応する位置で浅部から深部に向かう流量が多いこと,南部から北部に向かう流れが遮断されていることなどが明らかになった。これらの特徴から,月吉断層は水平方向の流れに対して遮水性の機能を有すると推測できた。また,月吉断層以北での地下水溶存イオン濃度の分布は,天水を起源とする一般的な花崗岩体への流入水の水質変化の特徴とほぼ同じであることがわかった。一方,月吉断層以南では,特に深部でNa^+,Ca^<2+>,Cl^-濃度が極端に高くなっている。これから,対象領域内には起源が異なる2つの地下水系が存在すると考えられ,この推察は月吉断層が遮水性の機能を有するという上記の特徴を考慮すれば妥当といえる。
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