2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20370004
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
佐渡 敬 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (70321601)
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Keywords | 遺伝学 / 発生・分化 / 遺伝学 / ゲノム |
Research Abstract |
本研究では哺乳類のメスにおけるX染色体不活性化過程で中心的な役割を果たすXist遺伝子の部分的機能欠損アリル(Xist^<IVS>)が招くヘテロクロマチン化の異常を詳細に解析することで,不活性X染色体に代表される条件的ヘテロクロマチンの形成機序の理解を深めることを目指した.前年度までの研究でこのアリルの影響はマウス胚体外組織よりも胚体組織の方が重篤であることが示唆されていたので,本年度は着床後間もない胚の組織学的解析を行い,胚体組織の起源であるエピブラストの細胞が著しく減少していることを確認した.しかし,RNA-FISHを行うとそれらの細胞でもXistの二者択一的な発現が認められ,X染色体不活性化自体は開始していることが強く示唆された.この結果は,Xist^<IVS>ホモ接合体のES細胞で分化誘導後,X染色体不活性化が開始されることからも支持された.しかし,胚体組織の一部の細胞では,胚体外組織と同様不活性X染色体のマーカーが消失しており,再活性化が起きていることが示唆された.これらのことから,部分的機能欠損変異アリルは胚体組織,胚体外組織どちらにおいても不活性化を引きおこす能力を持つが,その不活性化状態はおそらく不完全で,その状態に対する寛容性が胚体組織と胚体外組織で異なることが重篤さの違いに現れていると考えられた.Xist^<IVS>アリルによって引き起こされるX染色体不活性化が不完全であることは野生型と変異型TS細胞を用いたX染色体連鎖遺伝子の発現アレイ解析によって調べた結果からも確認された.本研究から,Xist^<IVS>が招くX染色体不活性の異常は,この変異アリルから発現されるXist RNAの機能が不十分であることによって引き起こされることが強く示唆された.この変異型RNAは今後Xist RNAの作用機序を解き明かしていくためのプラットフォームとして有用と考えられる.本研究の成果はDevelopment誌に受理された
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