2010 Fiscal Year Annual Research Report
種内表現型多型のスケールアップ効果:湖沼生態系に与える影響の実験的検証
Project/Area Number |
20370009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥田 昇 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30380281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
陀安 一郎 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (80353449)
吉田 丈人 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (40447321)
小北 智之 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 講師 (60372835)
近藤 倫生 龍谷大学, 理工学部, 准教授 (30388160)
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Keywords | 湖沼適応 / トランスクリプトーム / 次世代シークエンサー / 遺伝的変異 / 表現型可塑性 / 捕食者-被食者体サイズ比 / 生態系メタボリズム / 適応的食物網 |
Research Abstract |
1)魚類栄養多型の遺伝的基盤解明 魚類における湖沼適応形質の遺伝的基盤を解明するために、沖合環境への生理適応に関連した遺伝子群の探索を比較トランストクリプトーム解析によって試みた。非モデル生物に適用可能なHiCEP法を用いて遺伝子発現プロファイリングを実施したところ、コイ科魚類の沖合型-底生型ペア種において発現量の異なる遺伝子の幾つかは、サケ科ペア種で報告された発現差異と同じパターンを示した。湖沼適応に関連した遺伝子発現の収斂進化の可能性が示唆された。 2)魚類栄養多型の生態系影響の実験的解析 湖沼メソコスムで魚類の栄養多型を操作することによって、プランクトン群集の構造や生態系機能に及ぼす影響を実験的に検証した。魚類の摂餌型によって、プランクトン群集のサイズ構造、被食者-捕食者体サイズ比、群集平均栄養段階、群集代謝が変異することを実証した。また、栄養型の多様性が相乗効果をもたらすことも明らかにした。 3)藻類被食防衛形質可塑性の実験的解析 餌生物の被食防衛形質の表現型可塑性が個体群動態に与える影響を調べることを目的として、イカダモとワムシからなる被食-捕食系を用いた長期培養実験を実施した。昨年までの実験よって単離された異なる表現型可塑性をもつイカダモ株を利用し、可塑性の違いが被食-捕食動態に及ぼす効果を調べた。予備的な結果として、従来報告されていた群体形成だけでなく、細胞集塊の形成という新しい防衛形態があることを明らかにした。 4)適応的食物網の理論的解析 食物網はネスト構造を持つサブウェブの集合である。この構造が生物の適応進化によって生じた可能性について理論的解析を行った。生物の適応的餌選択と個体群動態の関連性を調べるために個体ベースモデルを作成し、多型の維持が食物網の構造と動態に強い影響を及ぼす可能性を示した。さらに、摂餌機能群内部の多様性が生態系機能に及ぼす安定化効果について、植物-分解者系を例に新しい理論を提示した。
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Research Products
(37 results)