Research Abstract |
本研究は,オオオサムシ亜属に見られる著しい体サイズ変異と体サイズの異なる種の同所的共存に注目し,高度勾配上での局所適応に付随する体サイズの側所的分化が,種分化と同所的共存につながる可能性を検証することを目的としている.研究対象は,四国地方に固有で,低山から高山に分布し,体サイズの地理的変異が著しいシコクオサムシである.今年度は,シコクオサムシの分布調査を5月から11月にかけて行い,飼育実験,形態・DNA分析用の成虫個体を採集した.また,野外の生育環境を評価するため,データロガーによる気温変化の測定,餌となるミミズ類の採集を行った.体サイズの遺伝的変異を明らかにするために,シコクオサムシの3亜種,イシズチオサ(石鎚山産,小型),トサオサ(皿ヶ峰産,大型),アワオサ(西祖谷山産,小型)を卵から15℃,20℃の高温条件で飼育し,羽化成虫のサイズを比較した.低温では,発育期間の著しい延長によって最終的なサイズが補償されていたが,低温では若干体サイズが小さくなる傾向があった.しかし温度による変異は相対的に小さく,体サイズは地域個体群ごとにほぼ遺伝的に決まっていることが明らかになった.比較のために,同亜属で四国に広く分布するヒメオサムシについても同様の飼育実験を行った.今年度の飼育によって得られたシコクオサムシ成虫は人工的に越冬休眠させており,次年度に交雑実験を行って,体サイズの差が機械的生殖隔離をもたらすかどうか,また異なる亜種間の接合後隔離があるかないかを調査する.
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