Research Abstract |
本年度は,体サイズが異なるシコクオサムシ集団が生息する,愛媛県石鎚山系,皿ヶ峰に,6カ所の定期調査地を設置し,4月~11月の間,2週間ごとにシコクオサムシ成虫およびミミズ類の採集を行って,季節消長の高度変異を明らかにした.このデータから,体サイズが異なる集団の野外での繁殖・発育スケジュール,餌資源の季節消長を明らかにした. 昨年飼育した,シコクオサムシ石鎚山(伊吹山),皿ヶ峰,西祖谷山集団を用いて,交配実験を行い,体サイズ差が交尾成功率に及ぼす効果を検証した.体サイズが異なることによって,雄交尾器の挿入が妨げられることが分かった.集団間雑種の形成については,産卵活動が不活発で十分な卵が得られなかったため,来年度に引き続き同じ交配ペアを用いて行うこととし,実験後の個体を休眠させて保管した. シコクオサムシ地域集団間の体サイズ変異と系統地理を明らかにするために,定期調査地以外での採集を各地で行った.調査地は,徳島県竜王山,剣山周辺,愛媛県楢原山,窓峠,高知県梶ヶ森,虚空蔵山,四万十市高森山,足摺岬である.これまでに採集したサンプルとあわせて,ミトコンドリアND5遺伝子シーケンスの分析を行った.その結果,地域集団問の分化は比較的小さく,同じ山塊で違う標高に生息し,体サイズが大きく異なる集団間でも,集団分化がほとんど認められない場合があることが分かった.体サイズの分化が比較的短期間に起こったことが示唆された.
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