Research Abstract |
本研究は,オオオサムシ亜属に見られる著しい体サイズ変異と体サイズの異なる種の同所的共存に注目し,高度勾配上での局所適応に付随する体サイズの側所的分化が,種分化と同所的共存につながる可能性を検証することを目的とした.研究対象は,四国地方に固有で,低山から高山に分布し,体サイズの地理的変異が著しいシコクオサムシである.今年度は,昨年行った石鎚山系における,シコクオサムシの生活史の高度変異と,餌資源であるミミズ類の種構成・季節消長について論文をまとめ,投稿した.発育成長に利用できる温度量は標高とともに減少するが,高地のシコクオサムシ個体群は低所の個体群より,繁殖開始時期が早かった.また,高所ほどミミズの種数は少なく,生物体量も少なかった,さらに,体長の遺伝パターンを解明するために,標高の異なる場所の集団を交配し,親子回帰によって,遺伝率の推定を行った.遺伝率を性別に推定した結果,雌親に対して回帰した場合の遺伝率は60%以上あったが,雄親に対して回帰した場合の遺伝率は雌雄いずれについても有意でなかった.この結果は,集団間の体長差を決めている遺伝要因が,雄では母親に由来することを示唆している.このオサムシはXY型の性染色体を持つため,X染色体上に体長差に最も関係する遺伝子が存在する可能性が高い.
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