2010 Fiscal Year Annual Research Report
環境微生物群集における光エネルギー利用と細菌の飢餓適応戦略
Project/Area Number |
20370013
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松浦 克美 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30181689)
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Keywords | 微生物群集 / 物質循環 / 飢餓適応 / 水素発生 / 紅色光合成細菌 / 緑色光合成細菌 / 還元力循環 / 微生物マット |
Research Abstract |
酸素を発生しない光合成細菌に注目し,微生物が貧栄養条件や飢餓条件にどう適応しているかの機構を明らかにする研究を進めた.微生物間の相互作用や物質循環に注目した.(1)温泉微生物マット中の光合成細菌遺伝子とイオウ・炭素・水素の循環機能の解析を進めた.長野県中房温泉の65℃微生物マットでの水素発生とイオウ代謝との関係を前年度までに明示して水素発生に関わる細菌を単離したが,本年度の研究で,それらの微生物群集中での量比を調べた.その結果,一次生産者である光合成細菌も,直接の水素生産者である水素発生細菌(発酵細菌)も,主要な構成種であることがわかった.光合成細菌を含む温泉微生物マット群集中で,貧栄養条件で少しずつ供給される電子が,イオウ,炭素,水素と原子間を循環しながら.群集中に蓄積され,そのことにより群集が発達できるという初年度に提唱した仮説が正しい可能性が高まった.(2)多摩川の川底礫上の微生物マット中の光合成細菌の存在と機能の解析を進めた.貧栄養環境である青梅付近の多摩川の川底礫上の光合成細菌の光合成遺伝子解析を行い,未知の種を含め多くの光合成細菌種が存在することを明らかにした.また,川底の礫上の微生物マットの発達過程を経時的に観察し,嫌気性光合成細菌が発達初期から存在することを明らかにした.(3)土壌中の光合成細菌の分布と貧栄養環境での光エネルギー利用について,土壌中から貧栄養条件を用いて集積・単離した光合成細菌は,既知の富栄養条件と同じ種であった.既知の3種の光合成細菌を用いて,実験室で炭素飢餓条件での生残曲線を測定したところ,いずれも光が生残に重要なこと,暗条件での生残は種により大きく異なることを発見した
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