2010 Fiscal Year Annual Research Report
藻類の受精発生における雌雄配偶子認識機構とオルガネラ細胞質遺伝機構の解析
Project/Area Number |
20370025
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
本村 泰三 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (30183974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 重行 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (70161338)
宮村 新一 筑波大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (00192766)
加藤 敦之 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (90177428)
長里 千香子 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (00374710)
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Keywords | オルガネラ / 細胞質遺伝 / 受精 / 藻類 / 電子顕微鏡 / 分子生物学 / 葉緑体 / ミトコンドリア |
Research Abstract |
本年度は,卵生殖を行う褐藻ワカメ・ウガノモクに焦点を絞って調査を行った。ワカメの場合には、精子由来の葉緑体・ミトコンドリアは受精後接合子内においてリソソームによって消化されていること、この消化過程は接合子が2細胞に分裂するまでに完了することが電子顕微鏡の観察から明らかとなった。これは、葉緑体DNA・ミトコンドリアDNAを対象とした分子生物学的解析結果と一致した。さらに卵の巨大化が進み卵生殖の進化が進んでいると考えらるウガノモクでは、精子細胞中には葉緑体・ミトコンドリアが存在いるが、葉緑体は眼点が存在しているものの極めて小型化していた。受精過程で精子核とともに精子オルガネラは卵中に取り込まれる。今までの電子顕微鏡を用いた報告の通り、これらはコンブ・ワカメと同様にリソソームにおいて消化されると考えられる。そこで卵と精子の葉緑体DNA・ミトコンドリアDNAのメチル化程度をBisulfite法を用いて調べたところ卵のオルガネラDNAと比較して精子のオルガネラDNAのメチル化程度は極端に低く、顕著な差がみられた。すなわち褐藻の卵生殖においては、オルガネラ細胞質遺伝に対してオルガネラDNAのメチル化が関与する可能性が示された。 本研究を通して、褐藻における細胞質遺伝についてまとめ、以下のような結論を得た。1)葉緑体は同型配偶子接合では両性遺伝であるが、卵生殖では母性遺伝を行う。2)ミトコンドリアは同型配偶子接合・卵生殖において母性遺伝を行う。3)卵生殖では精子由来の葉緑体とミトコンドリアは受精後接合子中でリソソームによって消化される。4)同型配偶子接合では雌雄配偶子間で葉緑体DNAとミトコンドリアDNAのメチル化程度に差は見られないが、卵生殖ではこれらオルガネラDNAのメチル化程度で顕著な差が見られる。
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Research Products
(17 results)