Research Abstract |
脊椎動物に特有な内分泌機構の進化を,脊椎動物に近縁で同じ脊索動物門に属するナメクジウオを材料として研究する.本研究の成果を含む今までの報告で,ナメクジウオは脊椎動物の内分泌機構の祖先型をもつことが明らかとなっている.本研究の目的は,ナメクジウオの新しい性ステロイドの同定,代謝経路の完成,受容体分子の局在とリガンド結合様式、成熟・性分化への性ステロイドの機能の解明を行ない,脊椎動物の生殖内分泌機構の起源を明らかにすることである,本年度は,性ステロイドのうち5α還元ステロイド代謝経路の存在部位の証拠を得るために,in situハイブリダイゼーション法で神経索と卵巣での遺伝子発現を調べた.神経索での発現は得られず,若い卵母細胞でのみ発現していた.神経索での発現遺伝子を調べるため,頭部で発現している遺伝子について次世代シーケンサーを使って網羅的に解析し,遺伝子探索を行っている.また,このデータからは日本産ナメクジウオとフロリダ産ナメクジウオのcDNA配列の比較ができたので,今後の遺伝子を使った研究に役立つと考えられる.一方,ナメクジウオの産卵様式はフェロモン分泌が関係する可能性があり,フェロモン物質の同定は出来ていないが,まず嗅覚受容体(OR)について研究を進めた,その結果,ナメクジウオは明確な嗅覚器をもたないにもかかわらず、そのゲノム配列から30種以上の脊椎動物型のOR遺伝子配列が見出され,そのいくつかについて遺伝子発現を調べたところ,皮膚の特定部位に見られるとともに,神経系に見られた.本年は最終年度のため,本研究の成果を整理し,ナメクジウオの神経索が脊椎動物の内分泌器官の多くの機能をもち,生殖の調節にも関連していることを明らかにしたいと考えている.
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