2008 Fiscal Year Annual Research Report
無脊椎動物における行動の自発的開始に関わる脳機構の神経生理・解剖学的解析
Project/Area Number |
20370028
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高畑 雅一 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 教授 (10111147)
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Keywords | 甲殻類 / 自発行動 / 脳 / シナプス統合 / 神経回路網 |
Research Abstract |
本研究は、行動生理学実験に有利な大型甲殻類を用いて、外界刺激に依存しない歩行の自発的な開始に関わる脳内シナプス機構を同定ニューロンレベルで解明することを目的とする。本年度は、細胞外記録法による腹髄(環食道縦連合)からのユニット活動解析により、自発性歩行に関わる脳からの下行性ユニットが大きく3種類に区別されることを明らかにした。実験には無麻酔全体標本を用い、その腹髄を細い軸索束に分けて、これに吸引電極(cut-end記録)またはフック電極(en-passant記録)を適用した。実験動物は球形トレッドミル上に固定し、その歩行運動をトレッドミルの動きとして記録した後、コンピュータによりその方向、速度、持続時間などを計算した。腹髄神経活動からのユニット分離はソフトウエア(CED社Spike2)により行った。3種類のユニットとはすなわち、1)白発性歩行の開始(筋電図記録と行動のビデオ記録によって確定)に数100ミリ秒〜数秒先行してスパイク活動を上昇させ、行動開始とともに元の活動レベルに戻る<先行型>、2)行動開始とともに、あるいは行動開始に先行してスパイク活動を上昇させ、歩行中も一定レベルでスパイク活動を維持する<持続型>、そして3)自発的な歩行の終了に先行してスパイク活動を増加させ、行動終了とともに元の活動レベルに戻る<終了>型である。これらの下行性ユニットは、腹髄(環食道縦連合)内の特定部位を走行することが判明した。今後はこれらユニット活動と実際の行動との間の因果関係を解析するため、同一個体で記録実験から刺激実験に切り替え、特定のユニットを含む軸索束を電気刺激した時の効果をトレッドミルおよび筋電図により調査する。
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