2009 Fiscal Year Annual Research Report
無脊椎動物における行動の自発的開始に関わる脳機構の神経生理・解剖学的解析
Project/Area Number |
20370028
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高畑 雅一 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 教授 (10111147)
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Keywords | 甲殻類 / 自発行動 / 脳 / シナプス統合 / 神経回路網 |
Research Abstract |
アメリカザリガニProcambarus clarkiiを球形トレッドミル上に固定し、その自発性および刺激誘発性の歩行運動を記録するとともに、脳から胸部神経節に下行する中枢神経活動を細胞外電極によって記録した。その結果、1)自発性歩行に際しては、歩行運動開始に先だって脳内ニューロンの活動が増加する、2)これら先行型ニューロン活動(準備活動と呼ぶ)は、歩行の開始とともに減少ないし消失する、3)刺激誘発性歩行に際しては、明確な準備活動は観察されず、また、自発性歩行とは異なるニューロンが活動する、等の結果を得た。準備活動を示すニューロンを、動物が静止している状態で電気刺激すると、動物は自発性歩行と同様の筋活動パターンで歩行を開始した。歩行運動開始に先行する準備活動を示す下行性ニューロンには、必ずしも歩行の方向(前方、後方)とは関係がないものと歩行方向に特異性を示すものとに区別され、この違いは実験継続時間(<数時間)を通して維持された。歩行開始前の十数秒間で調べた結果、まず方向非特異的な下行性ユニットが動員されたのちに方向特異的なユニットが動員されることが判明した。なお、これら先行型準備活動ニューロンの他に、歩行の継続時間中に選択的かつ持続的にスパイク活動を増加(減少)させるニューロン、自発的な歩行の終了に先行して活動を増加させるニューロンも見出された。後者については、歩行中の電気刺激によって歩行を人工的に終了させることができた。これらの結果は、動物の自発的な歩行(locomotor behavior)が、その準備・開始、運動の維持・継続、そして停止・完了、という異なる局面に関してそれぞれ異なるニューロン集団によって階層的かつ並列的に制御されていることを示唆している。今年度の研究では、さらに、準備活動の歩行運動開始効果を抑圧するユニット活動の存在をも明らかにした。
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