2008 Fiscal Year Annual Research Report
オスがオスを無性的にクローン生産するウメマツアリの繁殖機構と進化史の解明
Project/Area Number |
20370030
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷川 英祐 Hokkaido University, 大学院・農学研究院, 准教授 (40301874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大河原 恭祐 金沢大学, 大学院・自然科学研究科, 助教 (70283091)
三浦 徹 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 准教授 (00332594)
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Keywords | 無性生殖 / 系統樹 / 進化史 / 単為生殖 |
Research Abstract |
平成20年度は以下の3点について、研究計画を遂行し成果を得た。1)ウメマツアリの各地個体群の進化史の推定については、各地個体群からのサンプルについて、ミトコンドリアゲノム上のCOII〜ATP6(約2800bp)と核ゲノム上のトランスフェリン(約2000bp)の配列情報を得ることができ、これらに基づき個体群間の系統関係を推定した。ミトコンドリアの系統樹からは、タテナシウメマツアリ、ヤドリウメマツアリを外群としたときに、長翅型が祖先的で側系統的関係となり、その一部から短翅型が生じた事が示唆された。一方トランスフェリンからは、長翅型、短翅型双方のオス(=精子)に見られる配列は、メスとは独立のクレードを形成し、また、それぞれのメスとではなく、長翅オスと短翅オスが近縁で、しかも、メスよりも祖先的な配置となる事が示された。よって、オス無性生殖は翅型多型より起源が古い事が示唆された。福岡の短翅個体群の雌雄の核ゲノム上のオプシン配列を解析したところ、上述の結果から予測されるように、オスはメスと遺伝的に分化しており、遺伝子型は金沢の個体群と一致していた。2)個体の遺伝子型決定に用いる、集団内多型を示すマイクロサテライト遺伝子座をマグネティックビーズ法で探索したところ、多型を示す遺伝子座を8個新たに探し出す事に成功した。3)オス無性生殖の発生機構を知ることを目的として、卵形成時の染色体の挙動観察用に、卵巣小管内の卵細胞の核の蛍光染色と共焦点顕微鏡による観察をおこなった。いくつかの卵巣で細胞分裂時の染色体と思われる像の観察に成功した。来年度以降は、オス卵を作製している卵巣において同様の観察をおこない、オス卵生産のメカニズムとオス無性生殖の発生学的機構を調べていく予定である。
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