2010 Fiscal Year Annual Research Report
隔年開花種コダチスズムシソウと毎年開花種オキナワスズムシソウの一方向交雑の解析
Project/Area Number |
20370032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
邑田 仁 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (90134452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東馬 哲雄 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (10376527)
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Keywords | 植物 / 進化 / 分類 / 交雑 / 一斉開花 / スズムシソウ属 / 花粉 / 沖縄 |
Research Abstract |
奄美群島と沖縄島北部に分布し、毎年開花する多年草であるオキナワスズムシソウ(オキナワ)と、沖縄島に分布し6年周期で開花して枯れる1回繁殖型多年草コダチスズムシソウ(コダチ)を対象とし、それらの推定雑種の形成プロセスを詳細に検討し、雑種が独立種に向かう雑種種分化が生じているのかを明らかにすることを目的として研究を進めてきた。今年度は、2010年の冬に一斉開花したコダチ、およびオキナワと推定雑種について調査し、遺伝的解析のためのサンプルと、種子を採取した。また、台湾産でコダチの最近縁種であるS.flexicaulisについても追加現地調査を行ない、生活史の確認や資料収集を行なった。収集した資料について、葉緑体DNAのtrnSG遺伝子間領域および核DNAのPHOT2のexon、intron領域の塩基配列を決定した。また、コダチとオキナワで完全に分化している一塩基多型(SNP)をスクリーニングし、制限酵素部位に変異があるCAPSマーカー10遺伝子座を作成し、解析した。PHOT2遺伝子の塩基配列とCAPSマーカーのデータをもとに、Newhybrids (Anderson and Thompson,2002)解析を行なったところ、推定雑種には、F1雑種、F2雑種、コダチとバッククロスした個体、雑種後代が存在することが明らかとなったが、オキナワとバッククロスした個体は存在しないことが推定された。また、F1雑種やF2雑種は必ずオキナワの葉緑体DNAハプロタイプを持ち、他の雑種もほとんどの個体がオキナワのハプロタイプを持っていた。F1雑種やF2雑種が必ずオキナワのハプロタイプを持つことはコダチの花粉がオキナワの胚珠に運ばれて雑種が生じていることを示している。これは交雑の生じうるコダチの一斉開花年にはコダチが大量の花を咲かせるので、ポリネーターに付着した花粉のほとんどがコダチのものとなることが原因であると推定された。種子は、生育環境に対する適応度の違いがあるかどうか確かめるべく、異なる環境に播いて発芽および成長を観察しているが結果はまだ明らかでない。
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