Research Abstract |
我々は部屋全体の温度をコントロールする,などの大がかりなシステムを用いること無しに,サンプルの温度を-7℃~50℃まで自在に変化できる温度制御システムを開発した.このシステムは冷温水をサンプル上部のチャンバーに環流することによる非常に簡便,かつ安価なシステムであり,1分以内に目的の温度に変化させることが可能である. このシステムを用い,キメラ菌体において,温度変化によるモーター回転の応答についての研究を行った.一般的に酵素反応は,温度感受性があり,温度の上昇とともに活性が上昇する.我々は新たに開発した温度制御システムを用いて,10~50℃の範囲でのモーターの特製を調べた.その結果,負荷によりその応答は変化し,高負荷状態においては回転速度は変化するが,それは主に,溶液の粘性抵抗の変化によるものであり,トルク特性は一定であった.しかし,低負荷においては,回転速度,トルク,ともに温度により変化した.この結果を4状態モデルで解析したところ,温度感受性をもつ反応を特定することに成功した.この結果はモーターの回転メカニズムを考える上で非常に重要な知見となる. また,40度以上に温度を上昇させると,モーターの回転は停止した.当初は変性によるものであると考えていたが,その後の温度下降とともにモーターの回転は復活した.さらに,回転の上昇,下降においては,ステップ上の変化を見いだした.それら一つ一つのステップの大きさは一定であり,その数は約11であった.この結果は,べん毛モーター固定子の数と同一である.つまり,温度上昇とともにモーターから固定子が解離し,温度下降とともに固定子が復活することを示唆している.現在,ミュータントセルを用いた実験を行い,温度感受性部位の特定を目指している.
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