Research Abstract |
バクテリアべん毛モーターは,1菌体に4~5本のべん毛モーターを有し,それらの回転方向の転換を同期させて起こすことによりよりよい環境に向かって遊泳する.その回転方向転換は受容体からの情報を細胞内部のリン酸化タンパクの状態を変換し,各モーターに伝えることで起こると考えられているが,その詳細はまだよくわかっていない. 我々は,高速度カメラを用いて,複数のモーターの回転をサブ秒,数度の分解能で同時に計測するシステムを開発した.その結果,各モーターの回転方向の転換は同期しており,さらにそのタイミングは受容体に近いモーターから起こり,サブ秒の時間遅れで次のモーターに伝わって起こることがわかった.これらの知見は,従来考えられてきた解釈と異なり,高分解能計測システムにより明らかになったものである.これらの結果は,Biophysical Journalに掲載予定である. また,細胞外部からの刺激への応答を明らかにするために,caged化合物を作成し,水銀ランプ照射による応答を計測した.その結果,水銀ランプ照射により,モーターの回転方向は,CCW(反時計回り)となり,数十秒後に,また元の状態に戻った.この結果は,caged化合物が有効に機能していることを示唆する.さらに,レーザーによる局所照射により,高時間・空間分解能の刺激システムを開発し,細胞の応答を計測した. また,モーターの回転を直接計測することをめざし,モーター基部体構成タンパク質にGFPを融合させ,その偏光からモーター基部体の回転を直接計測するシステムを構築した.GFPの偏光は蛍光を偏光ビームスプリッターで分割し,同一カメラに投影することにより,計測を試みた.その結果,GFPのS,P偏光の強度がステージの回転とともに排他的に変化することに成功した.
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