2010 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質のファミリー分布に注目したタンパク質ワールドの研究
Project/Area Number |
20370058
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
美宅 成樹 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10107542)
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Keywords | 膜タンパク質 / 電荷分布 / タンパク質予測 / シミュレーション / ファミリー / ゲノム比較 / ファースカーブ / 自己相関関数 |
Research Abstract |
タンパク質ワールドというのは、ファミリーの間にタンパク質の変換可能性があり、タンパク質全体はその反応の平衡状態にあるというコンセプトである。本研究では、物理的なパラメータによる高精度タンパク質分類法を用いて、ゲノムからの全タンパク質の高精度分類を行い、タンパク質ワールドの高精度分類を行い、タンパク質ワールドの性質を明らかにすることを目的としている。平成22年度には、膜タンパク質の高精度分類の研究で大きな成果が得られた。真核生物のゲノムでは、遺伝子がエキソン-イントロン構造をとっているが、その構造が進化的時間でどう変化しているかということは、タンパク質ワールドを理解するために非常に重要な問題である。また、原核生物のゲノムにおける遺伝子の変化は主にDNA塩基配列に対する突然変異によって起こっている。それが生物ゲノムで設計されているタンパク質ワールドに対してどのような影響を与えているかも重要な問題である。前者については、エキソン数に対する膜タンパク質の分布とアミノ酸配列中の膜貫通領域の位置分布を調べることから、膜貫通領域を含むエキソンが体系的にシャフリングを受けていることが分かった。これはタンパク質ワールドの、進化的な時間スケールでの対波っくな側面を示している。他方、後者については、高精度予測システムを一種の評価関数として、DNA塩基配列への突然変異のシミュレーションを行った。その結果、コドンの使用頻度を現実の偏った分布に合わせると、膜タンパク質の割合が再現された。これも原核生物におけるタンパク質ワールドのダイナミックな側面を示している。これらの研究は、我々が開発してきた予測システムが高い精度のシステムとなっていることの単なる反映ではなく、その物理的な考え方が正しいことを示唆している。もう一つの大事な結論は、エキソン数に対するタンパク質の種類数の分布や、配列シミュレーションの結果など全てが、現実の生物ゲノム全体がランダムなプロセスの平衡状態を示していることである。
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Research Products
(18 results)