2010 Fiscal Year Annual Research Report
転写・RNAプロセシング・輸送の機能的連携と統合による遺伝子発現調節機構の解明
Project/Area Number |
20370070
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
谷 時雄 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (80197516)
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Keywords | スプライシング / RNAプロセシング / 転写 / mRNA輸送 / 遺伝子発現制御 / 分裂酵母 / 核 / mRNA3'末形成 |
Research Abstract |
本研究では、遺伝子の転写・pre-mRNAスプライシング・mRNA核外輸送など、従来は個別に研究されてきた諸反応が、生体内では互いに連携もしくは共役しながら進行していることを、分裂酵母のRNA代謝に関わる各種変異株を用いて統合的に解析し以下の結果を得た。(1)核膜孔複合体(NPC)因子に変異を持つmRNAの核外輸送変異株ptr5の遺伝学的解析により、Ptr5pがスプライシング因子との間に機能的関連性を持つことを明らかにした。分裂酵母では、NPC近辺が転写とスプライシングの場となり遺伝子発現を効率化している可能性が考えられた。(2)分裂酵母の機能未知因子spRNPS1がスプライソソームの構成成分であること、また、spRNPS1がmRNA核外輸送に関わるTREX複合体因子と機能的相互作用を示すことを、遺伝学的解析及び免疫共沈解析により明らかにした。spRNPS1は、分裂酵母においてスプライシング後の成熟mRNAをmRNA核外輸送経路にリンクさせる機能を持つことが示唆された。(3)染色体分離に関わるスピンドル極体(SPB)の構成因子であるPtr9pの変異株はmRNAの核外輸送に異常を示す。Ptr9pがTREX複合体と機能的に相互作用することを見いだした。更に、ptr9変異株の機能的復帰変異体を分離した。現在、その原因遺伝子をクローニング中である。復帰変異株の原因遺伝子を解析することで、如何にしてSPBの構成因子がmRNA核外輸送機構と連携するか、その分子機構解明の糸口となることが期待される。(4)mRNAの核外輸送に関わる核膜結合因子Ptr10pの変異が、転写伸長とmRNA核外輸送に関わるThp2(TREX複合体構成因子)の過剰発現によって機能相補されることを明らかにした。Ptr10pは転写とmRNA核外輸送をリンクする因子の一つである可能性が強く支持された。
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