2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20370093
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
伊藤 道彦 北里大学, 理学部, 准教授 (90240994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 啓 北里大学, 理学部, 助教 (50458767)
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Keywords | 性決定 / 性決定遺伝子 / DMRT1 / SRY / パラログ / 性染色体 / 共進化 / 新機能付加 |
Research Abstract |
本研究は、脊椎動物の性決定システムを分子レベルで比較解析し、そのシステム進化を議論・考察、さらに新規の進化仮説の提唱を行うことが目的である。最終年度の本年度は、現在までに同定された脊椎動物の性決定遺伝子(魚類メダカDmy、両生類アフリカツメガエルDm-W、あるいは哺乳類Sry)、及び、Dmy,Dm-WあるいはSryのプロトタイプ遺伝子Dmrt1あるいはSox3に注目し、その遺伝子進化の解析、更に性染色体と性決定遺伝子に関する考察を行った。以下にその詳細を列挙する。1.3つの性決定遺伝子の塩基配列の置換速度はすべて、対応するプロトタイプ遺伝子より高かった。これは、性決定遺伝子が性決定機能を担うために新たに進化した新機能付加型遺伝子であるという考え方と一致する。2.Dmrt1およびSox3のDNA結合ドメイン(それぞれDM、HMGドメイン)をコードする領域は、それ以外の領域に比べ保存性が高かった。これに対し、DmyはDMドメインの置換率がより高いが、Dm-Wでは有意な差は認められなかった。また、SryはSox3と同様の傾向にあった。3.これまでの研究および他研究の知見から、性決定遺伝子と性染色体における共進化仮説を提案した。すなわち、メダカ、アフリカツガエル、およびその近縁種のように、性染色体が未分化な場合、性染色体は性決定遺伝子の運び屋として機能するのみなので、性決定遺伝子は固定化されず、新性決定遺伝子の誕生の可能性が大きいが、哺乳類のように、性染色体の分化が明瞭な場合、性染色体が性決定以外の意味を持つので、性決定遺伝子は固定化される、という仮説である。この仮説に妥当性があれば、性染色体の分化が明瞭な鳥類では、進化過程で性決定遺伝子は固定化されると想像される。最近、これらの結果・考察・仮説の提唱を論文として発表した(Chromosome Res 2012)。
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