2009 Fiscal Year Annual Research Report
心血管系反応と中枢神経系反応から見たヒトの精神的ストレス適応能
Project/Area Number |
20370097
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
岩永 光一 Chiba University, 大学院・工学研究科, 教授 (70160124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 美和 千葉大学, 大学院・工学研究科, 講師 (70408722)
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Keywords | 生理人類学 / 精神ストレス / 適応能 / 短期記憶 / 血圧 / 心拍数 / 脳血液動態 |
Research Abstract |
1.短期記憶による作業負荷を段階的に設定できる精神作業の実験モデルを構築した。精神作業を構成する認知的要因の中で、特に「短期記憶」に着目した。記憶する内容は空間的位置、色彩、作業手順などでコンピュータスクリーン上に提示される。それらの組み合わせによって総合的な短期記憶の負荷量を段階的に設定した。4段階の作業負荷を設定したところ、主観的な作業難易度、作業成績では段階的に変化する結果が得られた。 2.上記の実験モデルを使用して心血管系と中枢神経系の生理反応によって作業負担を計測する実験を行った。被験者にコンピュータスクリーン上に提示される視覚情報を記憶し、その内容を再生するタスクを行わせた。心拍数、大脳皮質左右前頭葉酸素化ヘモグロビン濃度では、作業負荷の増大に伴って段階的に増加する傾向が認められたが、統計的に有意な作業負荷の主効果は認められなかった。また、血圧では、特に最も負荷が小さい条件において上昇度が大きい傾向が認められた。この結果は、設定した記憶負荷が最も小さい場合、設定した以外の精神的負荷が混入した可能性を示すものと解釈しており、モデルの改良が必要であると考えている。 3.記憶負荷の有無が生理反応にあたえる影響を調べる実験を行った。実験では、1に示した実験モデルを使用し、透過型のヘッドマウントディスプレイを用いた照合作業(記憶負荷は極端に小さい)とCRTディスプレイを用いた記憶作業を比較した。その結果、記憶負荷の存在は、心拍数、加速度脈波、大脳皮質前頭葉酸素化ヘモグロビンに顕著に現われるが、血圧では両者の間に有意な差は認められなかった。これらの結果から、生理指標によって精神作業の質的な評価を行う場合に、血圧のみによる評価は避けるべきであると言える。
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Research Products
(3 results)