Research Abstract |
中枢神経機能,自律神経機能,体温調節機能などの生理反応に及ぼす光の質の影響と,それらを修飾する性格特性,形態的特性,行動特性などの個人の特性の影響について明らかにすることを目的として,本年度は以下の研究を実施した。 1.色温度,照度を組み合わせた4条件の光環境下で,足し算タスクおよび騒音を付加した時の生理反応を検討した。その結果,左前額の酸素化ヘモグロビン量に照度の影響を認め,高照度光は酸素化ヘモグロビンの増加をもたらすことが示された。知的ストレスに対するP300潜時の変化には色温度の影響を認め,前頭野と左前額において,高色温度光はP300潜時の延長をもたらした。一方,情動的ストレスに対するP300振幅の減少は,後頭野において,高色温度光は低色温度より大きい傾向が示された。 2.夏期と冬期に,赤色,青色,および白色光(5000K)環境で健康な若年男性10名を対象に運動負荷を与えて発汗を促し,その後,冷水循環スーツにより体温を下げてふるえを誘発し,Core Interthreshold Zone (CIZ)を求めた。昨年の冬期に行われた結果と本年度の結果より,照明条件がCIZに影響を及ぼすことが明かとなった。また,夏期と冬期では反応が異なり,夏期では白色,赤色,青色の順に値が小さくなる傾向があったが,冬期では全体的にCIZが半減し,他の条件より青色で有意に大きい結果が示された。 3.様々な個人属性をもつ被験者において午前中の単波長光曝露が夜間の睡眠に与える影響を明らかにするために,10名の被験者で実験を行った。被験者は午前中に465nm(青),523nm(緑),638nm(赤)のいずれかの単波長光に曝露され,その後は一定の光環境で生活し,夜間に通常通り睡眠をとった。その結果,睡眠ポリグラフにおいて,睡眠ステージの推移に光条件間の差の可能性が認められた。
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