2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20380010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 直大 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (70466811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大杉 立 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40343107)
廣瀬 竜郎 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター, 北陸研究センター, 主任研究員 (90355579)
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Keywords | イネ / シンク・ソース関係 / 同化産物 / 転流 / 篩部 / メタボローム / トランスクリプトーム |
Research Abstract |
1.炭素・窒素分配の解析(担当:大杉) コシヒカリ/カサラスSPS1-NIL系統(SPS活性がコシヒカリより高い)および対照系統(コシヒカリ)を東京大学農学生命科学研究科附属生態調和農学機構の圃場にて栽培し、生育、乾物生産および収量厚生要素について両者を比較したところ、20年度および21年度の栽培試験と同様の結果が得られた。すなわち、SPS1-NILではコシヒカリに比べて、栄養成長期から幼穂形成期にかけての葉身SPS活性が高く、また、一穂籾数が多くなることが明らかとなった。このような複数年に渡る栽培試験の結果から、SPS1-NILの生産生理的特性が明らかになった。 2.メタボローム解析(担当:青木) 上記のSPS1-NIL系統と対照系統(コシヒカリ)をポット栽培し、穂孕み期に^<13>CO_2付与実験を行い、葉身から穂への^<13>Cの転流速度や分配率を両系統間で比較した。^<13>CO_2の付与は午前9時から3時間行い、付与終了直後、午後6時(6時間後)、および次の口の午前6時(18時間後)に各系統4個体ずつを穂、葉身および茎部に分けてサンプリングした。各サンプルは80℃で乾燥後、粉砕し、含有^<13>C量を質量分析計によって測定した。その結果、SPS1-NILはコシヒカリに比べて、^<13>Cの穂への分配率が高く葉身から穂への同化産物の転流速度が高くなっている可能性が示唆された。以上の結果は、上記1の栽培試験の結果と合わせて原著論文として発表する予定である(投稿準備中)。 3.イネの篩部における遺伝子発現解析(担当:廣瀬) 標準品種(日本晴)を通常の栽培条件で生育させ、栄養成長期の成熟葉(ソース)と未熟葉(シンク)をサンプリングし、それぞれの組織サンプルについて、LMD法による維管束の切り出しおよびRNA抽出を行った。得られたRNAサンプルを用いてソース維管朿とシンク維管束の間の遺伝子発現における違いを、44k-イネ・マイクロアレイによって網羅的に解析した。その結果、シンク維管束での発現量がソース維管束の2倍以上すなわちシンクで発現の高い遺伝子(52個)、また逆に1/2以下すなわちソースで発現の高い遺伝子(89個)がリストアップされた。これらの遺伝子は、ソース組織においては同化産物のローディング経路に、シンク組織においてはアンローディング経路に関与することが予想される。なお、以上の結果は、前年度までに得られた葉身および葉鞘(全組織)における「シンクまたはソース特異的遺伝子」のリストと合わせて比較・考察し、原著論文として発表する予定である(投稿準備中)。
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