2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20380026
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇垣 正志 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (20323438)
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Keywords | ジェミニウイルス / カリモウイルス / 細胞質移行 |
Research Abstract |
細胞質は、細胞骨格、オルガネフ、代謝物質などで混み合っており、実験的には20nm以上の粒子は自由拡散では移動できない。しかし、それ以上の大きさを有する多くの植物ウイルスは、細胞質を移動して細胞内の複製の場へ到達し、複製したのち再び細胞質を移動して隣接細胞とのチャネルである原形質連絡へ到達する。動物ウイルスでは、細胞質移行に、細胞骨格である微小管あるいはアクチン繊維を利用する例が報告されているが、植物ウイルスでは、細胞質移行の機構は、ほとんどわかっていない。植物細胞の核内で複製中間体となり、細胞質の封入体内でゲノムDNAウイルスであるカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の感染が、アクチン繊維の形成を阻害するラトランキュリンBにより顕著に阻害されることが、本研究により明らかになった。そこで、GFPによりアクチン繊維あるいは微小管が可視化されている組換えタバコ培養細胞を入手した。CaMV粒子をこれらの細胞に感染させ、ウイルス粒子を可視化することにより、細胞骨格とウイルス粒子との共局在が観察できることが期待される。CaMV粒子を可視化するため、ウイルス粒子を構成する外被タンパク質、および、virion-associated proteinに6アミノ酸からなる小さなタグであるテトラシステインタグ(TCタグ)を挿入したさまざまな組換えウイルスを作出したが、植物への感染性が失われた。そこで、外被タンパク質の構造が良くわかっているタバコモザイクウイルス(TMV)の外被タンパク質のカルボキシル末端にTCタグを挿入したところ、TMVの感染性がCaMVと同様に失われた。そこでさらに、TMVの外被タンパク質に付加したTCタグの前にリードスルー配列を挿入し、外被タンパク質の1部のみがTCタグとの融合タンパク質となるよう工夫したところ、感染性のある組換えウイルスとなり、F1AsH試薬によりウイルス粒子に由来する蛍光が観察できた。現在、CaMVの各タンパク質を同様の方法でTCタグにより標識したウイルスを作成中であり、CaMVとアクチン繊維との共局在を観察し、阻害剤等の影響を解析することにより、植物DNAウイルスの細胞質移行における細胞骨格の役割を明らかにできると期待される。
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Research Products
(4 results)