2010 Fiscal Year Annual Research Report
毒素vsエリシター:病原菌に由来する細胞死誘導因子の機能と進化に関する比較研究
Project/Area Number |
20380028
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
児玉 基一朗 鳥取大学, 農学部, 教授 (00183343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉岡 博文 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30240245)
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Keywords | 植物病原菌 / 毒素 / エリシター / 細胞死 |
Research Abstract |
植物-病原体相互作用の場において、菌の生産する毒素は病原性因子として、一方、エリシターは非病原性因子として機能する。両者は植物細胞死(プログラム細胞死)の誘導因子という共通の作用を示すが、その病理学的意義は正反対である。本研究では、病原菌由来の毒素として宿主特異的AAL毒素および非特異的毒素テヌアゾン酸、エリシターとして疫病菌由来のINFIおよびA.alternata (Aa)エリシターを材料として、毒素とエリシターという細胞死誘導因子の意義と機能に関する比較検討を通して、両者の介在する植物-病原体相互作用の統一的理解を目指した。 AAL毒素とエリシチンエリシターINF1を処理したNicotiana benthamiana(Nb,AAL毒素非感受性)およびN.umbratica (Nu,AAL毒素感受性)に茎枯病菌あるいは毒素非生産性Aaを接種し、Aaの感染における細胞死誘導型エリシターと毒素の役割について比較検討した。Nuへの茎枯病菌接種では壊死を伴う菌の感染が観察された。NbあるいはNu上でAaの感染が成立しない組み合わせにおいては、AAL毒素あるいはINFI処理で細胞死を誘導すると、壊死組織中への菌の進展が観察された。以上の結果から、necrotrophic病原菌Aaの感染過程においては、毒素/エリシターの区別なく誘導される壊死が菌の感染を有利に導き、両者ともに病原性因子として機能することが示唆された。また、NuにおいてAAL毒素による細胞死にエチレンシグナル経路が重要な役割を果たすことを明らかにし、AP2/ERF転写因子であるNuERF4がAAL毒素細胞死に関与することを示した。 以上の研究結果より、毒素とエリシターという細胞死誘導因子の意義と機能に関して、両者の共通点および相違点が明らかとなった。
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