2011 Fiscal Year Annual Research Report
多様な季節的多型を誘導するホルモン協働作用の分子解析
Project/Area Number |
20380033
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
塩見 邦博 信州大学, 繊維学部, 准教授 (70324241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 広人 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (60450334)
溝口 明 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (60183109)
富永 真琴 自然科学研究機構, 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (90260041)
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Keywords | 休眠ホルモン / ヒメシロモンドクガ / カイコ / 季節的多型 / 休眠 / トレードオフ / 発生可塑性 |
Research Abstract |
りんごや桜の害虫として知られているヒメシロモンドクガ(Orgyia thyellinaは、幼虫期の日長条件により、翅サイズや幼虫体色、繭色、卵休眠、卵サイズ、卵色、卵殻の厚さ、産卵数などに季節的多型を持つ昆虫である。季節的多型を持つ昆虫は数多く存在するが、日長条件一つでこれほど多様な性質が変化する昆虫は本種以外知られていない。さらに、季節への適応度を高めるため、体内のエネルギー分配を変化させるoogenesis-flightシンドロームとして知られる生活史トレードオフ戦略を行なっている。 我々は、これらの季節的多型を誘導する神経内分泌機構を解析してきた。その結果、このドクガの卵休眠は、カイコの卵休眠を誘導することで知られているFXPRLアミド族神経ペプチド(FXPRLa)に属する休眠ホルモン(DH)により誘導されることを明らかにし、このDHや他のFXPRLアミドは休眠だけでなく卵のさまざまな多型誘導に関わっていることを明らかにした。さらに、カイコにおいてはDHのみが休眠誘導に関わっているが、このドクガでは、DH以外の4種類のFXPRLaも卵休眠を誘導することを明らかにした。これらの結果より、FXPRLaは生活史トレードオフ戦略の一端を担っており、さらに、卵休眠誘導におけるペプチド作用は、FXPRLa受容体のレベルでカイコとは異なる進化過程を経ていることが推測された。以上のことより、本研究は、概念的にトレードオフ戦略として知られている季節的なエネルギー分配の分子実体およびその進化プロセスを包括的に解明する手がかりを与えた。
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Research Products
(6 results)