2010 Fiscal Year Annual Research Report
イネ植物体内における利用可能な窒素の情報検知機構と情報伝達経路の分子統御系の解明
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20380042
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
早川 俊彦 東北大学, 大学院・農学研究科, 准教授 (60261492)
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Keywords | 遺伝子 / シグナル伝達 / 植物 / 生理学 / 発現制御 |
Research Abstract |
本研究では、イネにおけるGlnシグナル検知因子候補のOsACRやOsACTPKの機能と窒素代謝系遺伝子発現や窒素代謝の調節への関与を検証・整理し、特に窒素の吸収同化・転流利用機構でのGln情報伝達系の階層的分子統御機作を解明する。今年度は、OsACTPK1の解析を進めた。外来NH_4^+不足・充足条件下のイネ幼植物でのOsACTPK族mRNAの発現解析結果では、OsACTPK1 mRNAが外来NH_4^+充足下のイネ根で他のOsACTPK族mRNAに比べ顕著に蓄積した。また、OsACTPK1-緑色蛍光タンパク質融合タンパク質のタマネギ表皮細胞とイネ細胞での一過的発現解析から、OsACTPK1のサイトゾル・核両局在が示唆された。組換えOsACTPK1の大腸菌内大量発現系と精製系を構築した。今後、OsACTPK1のリン酸化機能やイネ根での組織・細胞分布を解析する予定である。レトロトランスポゾンTos17挿入OsACTPK1遺伝子破壊イネ系統群(OsACTPK1-KO)と同様な遺伝背景のOsACTPK1遺伝子にTos17が挿入されていない分離系統群(対照系統)を比較解析した結果では、根のGln応答性遺伝子を含めたNH_4^+吸収・同化系遺伝子の発現に差異はなかった。しかし、低~充足濃度の外来NH_4^+供給下で栽培したOsACTPK1-KO幼植物では、対照系統と比較して、NH_4^+充足条件下で、根の伸長・乾物重減少と地上部の生育・乾物重増加及び根と地上部の全窒素・遊離アミノ酸含量の増加が認められ、根のNH_4^+蓄積量も増加した。^<15>NH_4^+吸収速度解析と誘導結合プラズマ質量分析法解析より、OsACTPK1-KOでの根のNH_4^+吸収速度の増加と根と地上部の金属カチオン含量の減少傾向を確認した。以上から、NH_4^+供給充足下のイネ幼植物根のNH_4^+吸収制御に、OsACTPK1が関わることが示唆された。
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