2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20380089
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
戸丸 信弘 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (50241774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 弥智子 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 准教授 (70447837)
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Keywords | ブナ / 適応 / EST / 核遺伝子 / 塩基配列 / 中立変異 / 塩基多様度 / TajimaのD |
Research Abstract |
本研究は、樹木の適応的な遺伝変異を明らかにするため、ブナを研究材料として適応的遺伝子の探索を試み、それら候補遺伝子の地理的変異を調べて、その生態的意義を明らかにすること.および得られた結果をもとに、ブナ集団の地域特有の遺伝資源保全やブナ林の保全管理のあり方を考察することを目的としている。本年度は咋年度に引き続き、ブナの発現遺伝子由来の塩基配列(EST)を用いて、ブナ4集団の各16個体について塩基配列変異を調べた。ブナのESTと公開データベース(UIliProtとTAIR)を用いて、ブナの発現遺伝子を増幅するPCRプライマーを設計し、設計したプライマーを用いてPCR増幅およびダイレクトシークエンスを試みた結果、7つの領域において配列の決定が可能であった。昨年度に決定した7つの領域の配列を合わせて、合計解析塩基数は6,847bp(エクソン3,872bpとイントロン2,975bp)となった。多型サイト数は合計169(エクソン56、イントロン113)、平均塩基多様度は0.00248(エクソン0.00160、イントロン0.00362)であった。TajimaのDは全体で-1.28428(エクソン-2.54223イントロン-2.00541)であり、歴史的な集団サイズの増大を示唆した。アロザイムや核マイクロサテライトでは北方集団ほど集団内の遺伝的多様性が低下する傾向が得られているが、今回のEST領域における多型サイト数と塩基多様度では、そのような傾向は見られず、ほぼ同程度であった。今後、EST領域と集団を増やして解析し、ブナ集団の塩基配列変異の一般的傾向を明らかにするとともに、日本海側集団と太平洋側集団の核ゲノムの分化を説明するモデルを用いて、適応的遺伝子の探索を試みる。
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