2008 Fiscal Year Annual Research Report
枯葉をねぐらとするコウモリの森林空間利用と社会構造の解明
Project/Area Number |
20380094
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
平川 浩文 Forestry and Forest Products Research Institute, 北海道支所, グループ長 (30353824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 靖幸 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (80353580)
揚妻 直樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (60285690)
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Keywords | コテングコウモリ / ねぐら選択 / 森林階層 / 雌雄の分離 |
Research Abstract |
1.捕獲・標識・皮膜採取:札幌市羊ヶ丘で6月から10月まで42回の捕獲を行い、50頭のコテングコウモリを捕獲・標識し、33頭から皮膜を採取した。 2.ラジオテレメトリー法によるねぐら場所調査:6・7月に札幌市羊ヶ丘で行ったねぐら調査の結果、メスのねぐらはすべて樹冠部にあった(6個体、のべ28日間24ヶ所)。一方、オスのねぐらの多くは樹冠より低い位置にあった(5個体、のべ28日間13ヶ所のうち、25日10ヶ所)。樹冠より低い位置にあったオスのねぐらはすべて枯葉であった。樹冠部ねぐらで種類が確認できたメス2例、オス1例は枯葉であった。この結果、雌雄のねぐらは森林空間内で階層的に分離していることが明らかとなった。雌雄で環境選択が異なる要因として三点が考えられた。1)温帯性昆虫食コウモリの一般的特性として休眠利用の雌雄差、2)コテングコウモリのねぐら習性としての葉の利用、3)森林階層間で見られる温度環境勾配。 3.採取皮膜からのDNA抽出と血縁分析:他種コウモリのマイクロサテライトDNA増幅用の19組のPCRプライマーを捕獲地の異なるコテングコウモリ4個体に適用したところ、DNA増幅可能なプライマーが18組あった。この中からMyotis myotis由来の9組とEptesicus fuscus由来の1組を用いて、羊ヶ丘で捕獲した58個体(オス20、メス38)について多型性を調べたところ、Myotis myotis由来の5組において明瞭な多型性が検出された。観察された対立遺伝子の数は4-9個、平均ヘテロ接合度が0.60であったことから、これら5組のPCRプライマーは血縁関係の推定に利用できると判断された。 4.人工ねぐらへの誘引と観察:札幌羊ヶ丘および苫小牧北大研究林で、人工皮革(ソフトレザー)製人工枯葉142個への誘致を試みた。のべ20512日間の観察で、3日のみ利用形跡が認められた。
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