2009 Fiscal Year Annual Research Report
担子菌による木材分解の引き金となるヘミセルロース分子構造の認識と応答機構
Project/Area Number |
20380100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鮫島 正浩 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30162530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 圭日子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (80345181)
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Keywords | 担子菌 / 木材分解 / セルロース / ヘミセルロース / Phanerocaete chrysosporium / Pichia pastoris / プロテオーム / 発現解析 |
Research Abstract |
担子菌による木材分解の初発反応としてヘミセルロースの分子構造認識が重要な役割を果たしていると予想し、このことを生化学的ならびに分子生物学的に実証することを本研究では目標としている。 本年度においては全ゲノム情報が開示されている褐色腐朽担子菌」Postia placentaがセルロースおよびグルコマンナンを分解する過程で分泌する菌体外タンパク質について二次元電気泳動法ならびにLC-MS/MS解析により網羅的に解析し、両者の差異について比較検討を行った。その結果、セルロース培養系では、糖酸化還元酵素や菌体壁分解関連の糖質加水分解酵素(GH)と推測されるタンパク質が多く生産されており、一方、グルコマンナン培養系においては、様々な糖質の分解に関わるグリコシダーゼおよびGHファミリー5のエンドグルカナーゼと推測されるタンパク質が主要酵素として生産されていた。これらの結果から、針葉樹の主なヘミセルロース成分であるグルコマンナンが本菌の木材分解酵素生産に大きな影響を与えている可能性が示唆された。また、白色腐朽担子菌Flammulina velutipes(エノキタケ)について、種々のバイオマス分解過程で生産されるタンパク質に対応するcDNA配列データベースを構築し、これに基づきセルロース分解培養系で生産される菌体外タンパク質について二次元電気泳動法ならびにLC-MS/MS解析により、40種の菌体外タンパク質についてcDNA情報に対する帰属を行った。 さらに、担子菌Phanerochaete chrysosporiumのセルロース分解系にキシランを添加すると無添加の場合に比べて菌体成長が促進されるが、主要なセルラーゼである6種のCel7酵素の発現に対するキシランの影響についてリアルタイムPCR法を用いて解析を行った。その結果、キシラン添加培養の初期に発現量が増加するcel7B、cel7Dおよびcdhといった遺伝子が、菌体の初期成長速度の増加に寄与している可能性が示唆された。
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