2010 Fiscal Year Annual Research Report
担子菌による木材分解の引き金となるヘミセルロース分子構造の認識と応答機構
Project/Area Number |
20380100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鮫島 正浩 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30162530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 圭日子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (80345181)
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Keywords | 担子菌 / 木材分解 / セルロース / ヘミセルロス / Phanerochaete chrysosporium / Pichia pastoris / プロラオーム / 発現解析 |
Research Abstract |
担子菌による木材分解の初発反応としてヘミセルロースの分子構造認識が重要な役割を果たしていると予想し、このことを生化学的ならびに分子生物学的に実証することを本研究では目標としている。 これまでの研究において、担子菌による木材等のセルロース系バイオマス分解の初発反応としてキシランの存在が重要な働きをしている可能性が示唆された。そこで、本年度は、キシランの化学構造に注目して担子菌の成長に与える影響について研究を進めた。担子菌Phanerochaete chrysosporiumを用いた実験においては、セルロース培地にキシランを添加すると菌の生育が促進されるが、その影響について広葉樹由来のグルクロノキシランでも、イネ科植物由来のアラビノキシランでも同程度の効果が認められた。そこで、広葉樹由来キシランから得た市販のキシロオリゴ糖を利用して、さらにキシラン構造と菌の生育促進効果との関係について検討を行った結果、側鎖としてグルクロノイル基を持つオリゴ糖の添加では生育促進効果が認められなかったのに対して、直鎖構造のみによって構成されるキシロオリゴ糖の添加では明瞭な生育促進効果が認められた。以上のことから、P.chrysosporiumが木材を分解の初発においてはキシランの存在が重要な役割を果たしており、さらにその分解によって生成した直鎖キシロオリゴ糖が木材の主要成分であるセルロース分解を含めたバイオマス全体の分解を促進することが示唆された。また、その過程においてキシランの側鎖構造の分解が初発反応の引き金として重要な役割を果たしており、このことから側鎖構造の差異が担子菌による木材分解特性に大きな影響を与えている可能性が考えられた。
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