2009 Fiscal Year Annual Research Report
潮汐を産卵同期に利用する魚類における干満情報の脳内処理・統合ネットワークの解明
Project/Area Number |
20380114
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
竹村 明洋 University of the Ryukyus, 理学部, 教授 (40222103)
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Keywords | サンゴ礁 / 熱帯 / ミツボシキュウセン / 潮汐 / 産卵 / 組織学 |
Research Abstract |
本研究は潮汐性のリズムが顕著に現れるサンゴ礁棲ベラ科魚類(ミツボシキュウセン)を実験材料に用い、潮汐や明暗情報が内因性のリズムに転換される道筋を明らかにすることを目的として行われた。本年度は静水圧変動が脳内モノアミン量の変動と性成熟関連要因に及ぼす影響について調べた。本研究で測定したモノアミンは、ドーパミン(DA)、DAの代謝物である3, 4-Dihydroxyphenylacetic acid(DOPAC)、Serotonin(5-HT)及び5-HTの代謝物である5-Hydroxyindoleacetic acid(5-HIAA)であった。水面に配置した魚(対照群)と水底(水深3m)に配置した魚(実験群)の脳内モノアミン代謝率を比較した結果、水圧付加後6時間で実験群のDA代謝率(DOPAC/DA)は対照群に比べて有意に低くなった。雌で同実験を行った結果、水圧付加後3時間で5-HT代謝率(5-HLAA/5-HA)は有意に増加した。脳下垂体における生殖腺刺激ホルモン(LH及びFSH)mRNA発現量は実験群と対照群で変化はみられなかった。生殖腺体指数や卵巣組織像にも水圧付加による変化がみられなかった。一方、実験群と対照群の卵巣片を培養して雌性ホルモン(estradiol-17β ; E_2)及び黄体ホルモン(17α, 20β-dihydroxy-4-pregnen-3-one ; DHP)分泌量を測定した結果、水圧付加した魚の卵巣においてDHP分泌量が有意に高くなった。昨年度得られた結果とあわせて考えると、ミツボシキュウセンのDA及び5-HT代謝は光と水圧の少なくとも二つの外部環境要因の影響を受けることが明らかになった。多くの魚類でDA及び5-HTは、それぞれ脳下垂体でのGtH分泌の抑制及び促進作用が知られていることから、水圧の付加によって脳下垂体における生殖腺刺激ホルモン分泌量が変化し、卵濾胞におけるDHP分泌を促進することによって卵母細胞の最終成熟能獲得に深く関わっている可能性がある。
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Research Products
(16 results)