Research Abstract |
サケ科をはじめとする多くの魚類卵から単離したラムノース結合特異性レクチン(RBL)の生物機能の分子機構を解析し,微生物感染制御に応用することを研究の目的とした。RBLの糖鎖認識ドメイン(CRD)構造は,線虫からヒトにいたる多くの生物に存在することが明らかになった。高度に保存された4つのジスルフィド結合および約95アミノ酸残基からなる魚類RBLのCRDは,2回または3回直列に繋がってサブユニットを構成する。シロサケから単離した3種類のRBLでは,新規ゲルろ過クロマト担体を使用した分子量測定により,それぞれ4(CSL1),18(CSL2),2(CSL3)のサブユニットが非共有結合していることを明らかにした。これらのRBLは,Gb3糖鎖への特異的な結合を介して,微生物と相互作用するばかりでなく魚類免疫細胞を活性化して炎症性サイトカインの発現や貪食作用,活性酸素の産生を誘導した。さらにその分子機構を解明するために,CSL3の立体構造をX線結晶解析で決定するとともに,CRDのリコンビナント体発現系を構築した。前年度までに構築したCSL2に加えて,CSL1とCSL3の発現系をベクターpTV118Nと大腸菌JM109を用いて構築したが,発現したタンパク質は封入体として得られた。これらの可溶化とリフォルディングが困難であったため,3回のCRD繰り返し構造をもつCSL1のcDNAを用いて,N末端,中間,C末端のCRDに対応する発現プラスミドを構築し,E.coli BL21(DE3)に形質転換してHisタグ融合タンパク質として発現に成功した。また,CSLのアミノ酸側鎖の化学修飾により,Arg側鎖とTyr側鎖がそれぞれ異なる血球凝集活性と活性酸素産生刺激における機能を有していることが分かり,機能改変を目指すCRD変異体作出のための重要な知見を得た。
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