2009 Fiscal Year Annual Research Report
底泥コア分析と数値シミュレーションによる有明海環境変化の原因解明と再生
Project/Area Number |
20380137
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
瀬口 昌洋 Saga University, 理事 (20093974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大串 浩一郎 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (00185232)
速水 祐一 佐賀大学, 有明海総合研究プロジェクト, 准教授 (00335887)
郡山 益実 佐賀大学, 農学部, 助教 (30380794)
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Keywords | 有明海 / 底泥コア / 環境変遷 / 低次生態系モデル / 数値シミュレーション / 底質悪化 / バクテリア / 貧酸素水塊 |
Research Abstract |
平成21年度においては、前年度に設定した有明海の環境変遷史のシナリオ設定の修正と低次生態系シミュレーションモデルの解析精度の向上に向けた取組、さらには底層・底質環境の悪化や二枚貝類の激減要因の究明を行った。すなわち、まず現在、まだ十分に収集されていない過去の現地調査資料や海岸・海底地形、水文気象、土砂流出などに関する既存資料を入手、解析し、さらにはこれらのデータに基づいてシナリオ設定を再検討し、その設定精度の向上を図った。次いで、奥部の広大な泥質干潟に生息する底生藻類、バクテリア、特に硝化菌、脱窒菌の生化学的活性や底質から直上海水への窒素、リンなどの溶出量と取り込み量に関する実験データを解析し、まだ十分に究明されていない、これらに関するモデルパラメータの特性を定量的に明らかにして低次生態系モデルに反映させ、解析精度の向上を行った。 これらの研究により、特に近年、二枚貝類などの生息に深刻な影響を及ぼしている貧酸素水塊発生の年代ごとの推移状況が定量的に評価された。また、近年の貧酸素水塊発生の激化要因の一つとして、濾過食者である二枚貝類の1970年代以降の激減に伴い、底層における縣濁態有機物が増加し、さらにはその好気的分解による酸素消費量が増大したことが推察された。一方、泥質干潟の硝化菌、脱窒菌の生化学的活性と酸化還元電位、pH、温度、塩分濃度などの環境要因との定量的関係が把握された。そして、底質中の脱窒菌は、底質直上海水中の亜硝酸態窒素や硝酸態窒素を多く取り込みながら脱窒を行っているため、底質-海水系の窒素循環に重大な影響を及ぼしていることが明らかにされた。
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