2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20380178
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
矢野 勝也 Nagoya University, 大学院・生命農学研究科, 准教授 (00283424)
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Keywords | 不均一性 / 植物 / 適応 / リン / コムギ / オオムギ / アルミニウム / hydraulic lift |
Research Abstract |
植物が野外で遭遇する環境は、実験室レベルの研究で採用されているような均一な環境条件とはほど遠く、むしろ不均一性を特徴としている。このような不均一な環境条件下における植物は、均一な環境条件で検証した実験結果からは演繹できないような振る舞いを示すことがある。例えば、水耕栽培条件では数μMの濃度でアルミニウムストレスを引き起こせても、砂耕条件で同様のストレスを誘導するのにより高濃度のアルミニウムが必要となる場合がある。これはおそらく、根が物理的な抵抗を受ける場合とそうでない場合に何らかの差異があるために起こると思われる。そこで、アルミニウムストレスを受けやすいコムギを用いて、酸性土壌を圧縮して根の物理的抵抗を高めることでストレス緩和ができるかどうかを調査した。コムギを酸性土壌(pH4.2)で生長させると、アルミニウムが根端に特異的が集積して根の伸長を強く抑制したが、同一土壌を圧縮した条件で生長させるとアルミニウムストレスを大きく緩和できた。根端を観察した結果、圧縮した酸性土壌で生長させたものはムシゲル様の粘液物質で覆われており、これがアルミニウムから根端を保護したように見受けられた。事実、根端を除く根軸の表面には土壌粒子が硬く固着していわゆる土壌鞘を形成しており、根の表面から土壌粒子を洗い流すのが極めて困難な状態であった。このような土壌鞘の存在は、多量の粘液物質が根端から分泌されていたことを強く示唆している。オオムギでも圧縮土壌の効果を検証したところ、コムギと同様の結果が得られた。以上の結果から、土壌の物理的抵抗を増大させることは、酸性土壌で問題となるアルミニウム毒性の緩和に有効であることが示唆された。
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Research Products
(6 results)