2008 Fiscal Year Annual Research Report
味覚応答と嗜好識別の分子基盤を検証するセンサリーゲノミクスの展開
Project/Area Number |
20380183
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 啓子 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (10151094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 晋治 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (50376563)
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Keywords | 味覚システム / トランスジェニック動物 / 味覚応答 / 味の嗜好性 / 味細胞系譜 |
Research Abstract |
味蕾細胞は約10日毎にターンオーバーする。このように再生・増殖・分化・細胞死を繰り返す味蕾細胞がどのようにして5基本味の受容細胞の細胞系譜を決めているのかは重要な課題である。 筆者らは味蕾細胞の細胞系譜に関与する転写調節因子を見出した。それらの中のHNF一叩は、味細胞に分化した後のTIR系の細胞にのみ発現すること、さらに味細胞系譜に分化する以前に発現する新しい因子を見出しKOマウスを作製した云KOマウスの味蕾において発現する味細胞の種類をin situハイプリグイゼーションならびに抗体染色により解析したところ、甘味、旨味および苦味受容体を発現する味細胞を欠失していた。一方、酸味・塩味のマーカー分子を発現する味細胞は、野生型マウスの味蕾と同様に存在することが観察された。さらにこれらのKOマウスを用いた2瓶選択の嗜好性テストを行ったところ、甘味(シュクロース)、旨味(アミノ酸Glu)、苦味(デナトニウム)に対する感受性が有意に低下していた。一方、酸味(クエン酸)および塩味(塩化ナトリウム)の嗜好性は変化が見られなかった。さらに、鼓索神経・舌咽神経における味物質の応答を電気生理学により計測したところ、KOマウスにおいては甘味(シュクロース)、旨味(アミノ酸Glu)、苦味(デナトニウム)の応答は認められず、酸味(クエン酸)と塩味(塩化ナトリウム)の応答は野生型マウスと同様であった。本成果は味蕾細胞の分裂、増殖、分化、細胞死、さらには味細胞系譜に関する新たな知見を示唆するものである。
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