2008 Fiscal Year Annual Research Report
メタボリックストレスによる細胞極性の破綻と増殖停止の分子機序
Project/Area Number |
20380187
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 善晴 Kyoto University, 農学研究科, 准教授 (70203263)
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Keywords | 酵母 / 代謝 / ストレス / 細胞分裂 / 極性成長 / ホスファチジルイノシトール |
Research Abstract |
私はこれまでに、解糖系から生成する代謝物メチルグリオキサール(MG)が、種々の転写因子の活性化や細胞内シグナル伝達系に影響を及ぼすことを出芽酵母や分裂酵母をモデル生物として見いだし、その分子メカニズムの一端を明らかにするとともに、代謝物によるシグナル伝達機構「メタボリックシグナリング」という概念を提唱してきた。本研究課題では、これらの解析の過程で新たに発見したMGが引き起こす3つの現象(ホスファチジルイノシトール代謝の変動、細胞極性の消失、スピンドル極体(SPB)の分配異常)について、その分子メカニズムの詳細を明らかにすることを目的としている。本年度は、MGによるホスファチジルイノシトール(3,5)ビスリン酸(PtdIns(3,5)P2)レベルの上昇機構について検討を行った。 これまでの解析から、MGがPtdIns(3,5)P2レベルの上昇を引き起こすことを見いだしている。PtdIns(3,5)P2の合成はFab1によるが、PtdIns(3,5)P2に作用するホスファターゼとして、Fig4、Inp52、Inp53が知られている。そこで、これらの遺伝子の破壊株を構築し、MG処理によるPtdIns(3,5)P2レベルの変動について検討を行った。その結果、inp52Δinp53Δ二重破壊株ではPtdIns(3,5)P2のベースのレベルの上昇が観察され、MG処理により顕著にPtdIns(3,5)P2レベルの上昇が観察された。一方、fig4Δ株ではMGによるPtdIns(3,5)P2レベルの上昇が観察されなくなった。興味深いことに、inp52Δinp53Δfig4Δ株では、PtdIns(3,5)P2のベースレベルの上昇は認められるものの、MGによるPtdIns(3,5)P2レベルの上昇は観察されなくなった。Fig4はPtdIns(3,5)P2に対するホスファターゼとして機能すると同時に、Vac7、Vac14とともにFab1の活性化因子として機能することが知られている。従って、MGはFig4を介してFab1の活性に影響を与え、結果的にPtdIns(3,5)P2レベルの上昇を引き起こしていると考えられた。
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