2010 Fiscal Year Annual Research Report
レドックス制御型DDSを利用した癌化学・免疫治療システムの開発
Project/Area Number |
20390010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西川 元也 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (40273437)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田畑 泰彦 京都大学, 再生医科学研究科, 教授 (50211371)
由里本 博也 京都大学, 農学研究科, 准教授 (00283648)
高倉 喜信 京都大学, 薬学研究科, 教授 (30171432)
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Keywords | カタラーゼ / 活性酵素 / ハイドロゲル / 癌転移 / デイバリー |
Research Abstract |
酸化ストレスは、癌や炎症、さらには動脈硬化や生活習慣病など広範な疾患における関与が注目されている。酸化ストレスに対する防御には抗酸化化合物の利用が期待され、中でも活性酸素を特異的かつ効率的に消去可能であるカタラーゼなどの活性酸素消去酵素の利用が期待されている。本研究では、種々の動態制御機能を賦与したカタラーゼ誘導体を作製し、慢性疾患に対しても有効なレドックス制御型新規DDS製剤を開発する。最終年度となる本年度は、これまでに開発した体内動態制御型ヒトカタラーゼ誘導体を用い、腹膜癒着ならびに癌細胞の腹膜播種の抑制について評価した。癌細胞接着の抑制に有効であったアルギニンが9残基連結したR9ペプチドをC末に融合したヒトカタラーゼ誘導体(hCAT-R9)に加えて、アルブミンと結合親和性を有するペプチド(ABP)をC末に融合した誘導体(hCAT-ABP)を新たに設計、調製した。これら誘導体は、ヒトカタラーゼと比較してマウス腹腔内投与後、長時間腹腔内に残存することが示された。次いで、盲腸焼灼を利用した手術侵襲モデルを新たに樹立し、本モデルでの臓器癒着ならびに脂質過酸化、癌細胞の腹膜播種に及ぼす各誘導体の効果を判定した。焼灼により顕著な臓器間癒着が認められ、脂質過酸化レベルも亢進し、癌細胞数も有意に増大した。しかしながら、脂質過酸化ならびに癌転移は、hCAT-R9あるいはhCAT-ABPの投与により抑制可能であった。以上のことから、手術侵襲に伴う腹腔内の炎症反応、それに伴う癌転移を誘因する遺伝子の発現亢進をhCATの投与により抑制できること、さらにhCATに機能性ペプチドを融合することで腹腔内滞留性を増大することが、手術侵襲亢進する癌細胞の腹膜転移を抑制する有効な方法論になりうることが明らかとなった。
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Research Products
(4 results)