2008 Fiscal Year Annual Research Report
薬物代謝酵素CYPを舞台とした薬物間相互作用の網羅的解析
Project/Area Number |
20390011
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宇野 公之 Osaka University, 薬学研究科, 教授 (00183020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青山 浩 大阪大学, 薬学研究科, 准教授 (60291910)
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Keywords | シトクロムP450 / 薬物代謝 / 一塩基多型 / 共鳴ラマン分光 / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
シトクロムP450(CYP)はヒト薬物代謝の中心的役割を演じる重要な酵素であり、その活性はヒトゲノムの一塩基多型(SNP)により大きく影響を受ける場合がある。CYPの基質結合ポケット内における薬物間相互作用は予期せぬ副作用の原因となるが、それ自身の複雑さに加えてSNPの影響による複雑さもあいまって、解析がほとんど進んでいないのが現状である。そこで本研究では、薬物間相互作用を引き起こす薬物の組合せとSNPの影響を明らかにするため、(1)薬物間相互作用の網羅的測定、(2)薬物間相互作用の構造解析、という2つのサブテーマを設定して検討する。本年度においては、多種の薬物代謝に関わり多数の薬物間相互作用に関する報告がなされているものの、その解析が特に遅れているCYP2D6、CYP3A4を大量調製するため、これらの精製法に改良を加えた。培地に加えるタンパク質安定化剤やヘム合成基質の量を加減することにより、従来法に比べて2倍以上の収量を得ることに成功した。次に、これらのCYPを用い、紫外可視吸収滴定により薬物結合過程を精査した。その結果、CYP3A4ではその基質となるプロゲステロンやテストステロンが2段階の結合過程を示すことを見出した。さらに共鳴ラマン法を用いて検討した結果、これらの基質は第1段階目の結合によりヘム鉄に対する水分子の配位を促進することがわかった。この結果は他のCYP基質とは異なる挙動であり、酵素反応にとってむしろ阻害的な影響を及ぼすと考えられた。このことを逆に考えれば、第2の結合分子がエフェクターとして酵素活性を上昇させることを意味しており、多段階結合を示す薬物の特徴を表す可能性であると思われた。
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