2010 Fiscal Year Annual Research Report
ミクログリアの働きから見た脳内出血の病理およびその防御に関する研究
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20390026
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
香月 博志 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (40240733)
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Keywords | 脳卒中 / トロンビン / ヘムオキシゲナーゼ / アポトーシス / ニコチン / 神経保護 / ミクログリア / 好中球 |
Research Abstract |
1.培養大脳皮質-線条体組織切片を用いて、血中プロテアーゼであるトロンビンにより誘導される脳組織傷害におけるヘムオキシゲナーゼー1(HO-1)の役割について検討した。HO-1を阻害するZnPPIXは、トロンビンによる大脳皮質ニューロン死を抑制し、線条体組織萎縮も抑制する傾向を示した。トロンビンによるHO-1の発現誘導は、ミクログリアとアストロサイトに認められた。HO-1の発現誘導はp38MAPキナーゼの阻害によって顕著に抑制され、またp38MAPキナーゼの初期の活性化は線条体のミクログリアに認められた。ZnPPIX存在下でトロンビンを処置すると、線条体ミクログリアにアポトーシス様の細胞死が誘導され、ミクログリアの数が有意に減少した。一方、CO遊離薬はトロンビン毒性に対するZnPPIXの保護効果に拮抗した。これらの結果から、p38依存的なHO-1の発現が線条体ミクログリアの生存維持に働くことで組織傷害の拡大に寄与すること、また大脳皮質ニューロン死もHO-1の発現誘導とそれによるCO産生を介して制御されることが示唆された。 2.コラゲナーゼ微量注入によるマウス脳内出血モデルを用いて、ニコチンの作用を検討した。脳内出血誘発の3時間後より1日1回、ニコチン(2mg/kg)を腹腔内投与すると、3日後における血腫中心部の残存ニューロン数が有意に増加した。また、ニコチンは抗アポトーシスタンパク質Bc1-2の脳内での相対的発現量を増加させた。加えてニコチンは出血に伴う血腫周縁部のミクログリアの活性化や酸化ストレスの増大、および血腫内への好中球の浸潤を抑制した。さらに、ニコチンを投与したマウスには、感覚運動機能障害および個体生存率において顕著な改善が見られた。これらの結果から、ニコチン性アセチルコリン受容体が脳内出血治療の新たなターゲットとなりうることが示唆された。
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