2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20390064
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
椛 秀人 高知大学, 教育研究部・医療学系, 教授 (50136371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥谷 文乃 高知大学, 教育研究部・医療学系, 准教授 (10194490)
谷口 睦男 高知大学, 教育研究部・医療学系, 助教 (10304677)
村田 芳博 高知大学, 教育研究部・医療学系, 助教 (40377031)
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Keywords | 匂い / 学習 / ノルアドレナリン / 嗅球 / 僧帽細胞 / 顆粒細胞 / シナプス可塑性 / LTP |
Research Abstract |
本研究の目的は、特定の感受性期に成立する、生存に不可欠な3種の匂いの記憶・学習、すなわち、雌マウスに形成される交配雄のフェロモンの記憶(夫婦の絆のモデル)、新生仔ラットにおける匂い学習(母と子の絆のモデルI)、ラットにおける母性行動(母と子の絆のモデルII)のメカニズムを分子、細胞、システムレベルで解明することである。本年度は、新生仔ラットにおける匂いの嫌悪学習とシナプス伝達効率の長期増強(long-term potentiation : LTP)との関連性について検討した。新生仔ラットは、嗅覚と体性感覚に頼って外部環境との関係を発達させるため、この時期は匂いの条件付けが強く成立する感受性期なのである。事実、匂いと電撃を30分間1回対提示するだけで、この匂いに対する嫌悪学習が成立する。この匂い学習は、主嗅球の僧帽細胞と顆粒細胞の相反性シナプスが深く関わり、転写因子CREB (cyclic AMP response element binding protein)の発現とそのリン酸化を介して成立することを報告してきた。この嫌悪学習は嗅球内にbeta受容体アンタゴニストを投与することによって阻害された。匂いとbeta受容体アゴニストの嗅球内投与のペアリングを行うと、その匂いに対して嗜好反応かあるいは嫌悪反応が惹起された。これらの結果から、ノルアドレナリンは学習を成立させるが、嗜好か嫌悪かの決定には他の因子がかかわることが示唆された。次に、スライス標本を用いて、嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのグルタミン酸作動性シナプス伝達に誘導されるLTPもbeta受容体によって制御された。以上の成果は、匂いの嫌悪学習が嗅球の僧帽細胞から顆粒細胞へのグルタミン酸作動性シナプス伝達効率のLTPという基礎過程によって支えられていることを示唆している。
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Research Products
(6 results)