2008 Fiscal Year Annual Research Report
NO合成酵素完全欠損マウスを用いた生体内NO合成酵素系の意義の解明
Project/Area Number |
20390074
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
筒井 正人 University of Occupational and Environmental Health, Japan, 医学部, 准教授 (70309962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 陽一 産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
笹栗 靖之 産業医科大学, 医学部, 教授 (60140646)
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Keywords | 一酸化窒素合成酵素 / ノックアウトマウス / 心筋梗塞 / 動脈硬化 / メタボリック症候群 / 高脂血症 / 心肥大 / 老化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、我々が世界に先駆けて開発した一酸化窒素(NO)合成酵素(NOS)システム完全欠損マウスを用いて、生体内におけるNOSシステムの意義を解明することである。3年計画の1年目である本年度は、以下の点を明らかにした。 1. 自然発症心筋梗塞の機序の解明:NOSシステム完全欠損マウスにアンジオテンシンII1型(AT1)受容体拮抗薬オルメサルタンを10ヶ月間長期投与したところ、冠動脈硬化病変形成、心筋梗塞罹患率、並びに心臓突然死が有意に抑制された。以上より、AT1受容体経路がNOSシステム完全欠損マウスの心筋梗塞の病因に関与していることが示唆された。 2. 血管傷害後の血管病変形成におけるNOSシステムの意義の解明:頸動脈結紮後の血管病変形成(内膜肥厚および収縮性血管リモデリング)の程度は、野生型マウスに比してNOSシステム完全欠損マウスで著明に増悪していた。従って、NOSシステムが血管傷害後の血管病変形成に対して抑制的に作用していることが示唆された。 3. メタボリックシンドロームの病態の解明:AT1受容体拮抗薬オルメサルタンの長期投与は、NOSシステム完全欠損マウスに見られたメタボリックシンドロームも有意に改善した。従って、AT1受容体経路がNOSシステム完全欠損マウスのメタボリックシンドロームの分子機序に関与していることが示唆された。 4. 高脂肪食負荷が脂質代謝に及ぼす効果の検討:NOSシステム完全欠損マウスに高脂肪食を3ヶ月間負荷すると、血清コレステロールレベルが著しく増加した。現在、この機序の一部に、肝臓の低比重リポ蛋白(LDL)受容体のダウンレギュレーションが関与していることを明らかにしつつある。 本研究は、生体内におけるNOSシステムの意義を、世界で初めて詳細に解明する点に、大きな学術的意義がある。
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