2010 Fiscal Year Annual Research Report
NO合成酵素完全欠損マウスを用いた生体内NO合成酵素系の意義の解明
Project/Area Number |
20390074
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
筒井 正人 琉球大学, 医学研究科, 教授 (70309962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹栗 靖之 産業医科大学, 医学部, 教授 (60140646)
上田 陽一 産業医科大学, 医学部, 教授 (10232745)
柳原 延章 産業医科大学, 医学部, 教授 (80140896)
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Keywords | 一酸化窒素 / 一酸化窒素合成酵素 / ノックアウトマウス / 動脈硬化 / 高脂血症 / 脂質代謝 / 心不全 / 腎臓病 |
Research Abstract |
本研究の目的は、一酸化窒素合成酵素(NOS)完全欠損マウスを用いて、循環器疾患の成因におけるNOS系の意義を解明することである。 1.血管病変形成における骨髄NOS系の意義の解明 頸動脈結紮後の血管病変形成における骨髄NOS系の役割を検討した。NOS完全欠損マウスの骨髄を移植した野生型マウスでは、野生型マウスの骨髄を移植した野生型マウスと比較して、頸動脈結紮2週間後の新生内膜形成および収縮性血管リモデリングが著明に増悪した。以上より、骨髄NOS系が頸動脈結紮後の血管病変形成において抑制的役割を果たしていることが初めて示唆された。 2.脂質代謝におけるNOS系の意義の解明 脂質代謝におけるNOS系の役割を検討した。NOS完全欠損マウスに高脂肪食を負荷すると、著明な高脂血症と心臓突然死が惹起された。この高脂血症の機序には、肝臓SREBP-2を介した肝臓LDL受容体の発現低下が関与していることを見出した。以上より、NOS系が脂質代謝の恒常性の維持に重要な役割を果たしていることが示唆された。 3.拡張期心不全におけるNOS系の意義の解明 5ヶ月齢のNOS完全欠損マウスでは、拡張期心不全の病態が認められた。Angiotensin II 1型(AT1)受容体拮抗薬オルメサルタンを長期経口投与するとこの病態が改善したことから、この機序にはAT1受容体経路が関与していることが示唆された。 4.慢性腎臓病の成因におけるNOS系の意義の解明 慢性腎臓病の成因におけるNOS系の役割を検討した。野生型マウスでは、4/6腎摘後の生存率の低下は認めなかったが、NOS完全欠損マウスでは生存率の著明な低下を認めた。主要な死因は、急性心筋梗塞であった。以上より、NOS系が慢性腎臓病の成因に重要な役割を果たしていることが示唆された。 以上本研究では、循環器疾患の成因におけるNOS系の意義を世界で初めて明らかにした。
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