2010 Fiscal Year Annual Research Report
細胞老化シグナルの生体内ダイナミクスとその役割の解明
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20390094
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
原 英二 財団法人癌研究会, 癌研究所がん生物部, 部長 (80263268)
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Keywords | 癌 / 老化 / イメージング / シグナル伝達 / ストレス |
Research Abstract |
細胞老化反応の生体内ダイナミクスを解明することを目的として、細胞老化の誘導に中心的な役割を担っているp16^<INK4a>遺伝子やp21^<Waf1>遺伝子の発現をマウスの生体内でインビボ・イメージングすることを試みた。p16^<INK4a>及びp21^<Waf1>の発現を蛍の発光酵素であるルシフェラーゼを用いてリアルタイムにインビボ・イメージングすることを可能にするシステムの構築をおこなった。このシステムを用いて、1.マウスを通常に老化させた場合、2.高脂肪食を与えて飼育することで肥満させた場合、3.特定の遺伝子をノックアウトして早老症にした場合、の各々の条件下でp16^<INK4a>及びp21^<Wafl>遺伝子の発現の体内動態を解析した。その結果、p16^<INK4a>遺伝子は、通常の加齢の場合、様々な臓器(特に、リンパ節、脾臓、小腸、膵臓等)で発現が著しく上昇し、それらの臓器ではDNAダメージの蓄積とDNMT1の発現レベルの低下が認められた。しかし、p21^<Wafl>遺伝子の発現については腎臓以外の臓器では加齢に伴う発現レベルの上昇が認められなかった。高脂肪食を与えて肥満させた場合には、腹部や精巣周囲の脂肪組織と肝臓においてp16^<INK4a>とp21^<Waf1>遺伝子の両方の発現レベルが顕著に増加していた。これらの組織においては複数のDNAダメージマーカーが確認できたことから、DNAダメージの蓄積が細胞老化反応の引き金になっている可能性が示唆された。また、KlothoマウスやBmi-1ノックアウトマウスなどの早老症マウスとp16^<INK4a>イメージングマウスやp21^<Waf1>イメージングマウスを交配させたマウスを用いた解析を進行中である。現在までのところ、上記早老症マウスでは様々な臓器においてp16^<INK4a>遺伝子の発現は著しく上昇するがp21^<Waf1>遺伝子に付いてはあまり変化がない。これらの結果から、p21^<Waf1>遺伝子よりp16^<INK4a>遺伝子の方が、少なくともマウスにおいてはより個体老化に密接に係わっていることが示唆された。
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Research Products
(4 results)