Research Abstract |
癌遺伝子であるALKの転座(EML4-ALK融合遺伝子)により発がんしていると考えられる肺癌が報告された.本年度は,363例の非小細胞癌を検索し,腺癌253例中に11例のALK転座肺癌を見出し,臨床病理学的事項,EGFR変異,ras変異,p53変異を検索した.他の組織型には,本転座は見られなかった(扁平上皮癌0/72,腺扁平上皮癌0/7,大細胞癌0/7,多形癌0/2,小細胞癌0/22).また,cell lineageを調べるため,TTF-1のタンパク発現を免疫染色で調べた. その結果,EML4-ALK融合遺伝子陽性の患者は,平均年齢56才で,陰性患者の64才と比べ,有意に若年であった.喫煙歴では,喫煙指数400以上の重喫煙者が1/11であり,陰性患者の109/241より有意に少なかった.また,腺癌の組織像では,腺房腺癌優勢のものが6/11と,EML4-ALK融合遺伝子陰性群の28/242より有意に多かった.遺伝子変異では,EGFR変異,ras変異は見られず,EML4-ALK融合遺伝子と相互排他的であった.p53変異は1/11(非喫煙者)にみられ,一般例の40%程度より少なかった.変異の種類は,G/A transitionであり,非喫煙者に多いタイプの変異であった. ALK転座肺癌は,当初,喫煙者に見つかったが,多数例の解析では,むしろ軽度喫煙者ないし非喫煙者の特徴を示すことが判明した.また,EML4-ALK融合遺伝子は,他のRTK変化と相互排他的であることが判明した. 現在,更に症例数を増やして解析中である. 次年度以降は,PTK下流のシグナル伝達系因子の検索を行う.
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