Research Abstract |
ヘテロクロマチンの構造制御は細胞の正常な生命活動に必須であり,その制御異常は染色体不安定性を引き起こし,発癌を誘導する.申請者らが新規に同定したhuman WAPL (hWAPL)遺伝子は,Drosophilaのヘテロクロマチンの構造制御に関わるwapl遺伝子のヒトホモログであり,その過剰発現が子宮頸癌の発生に関与することが示された(Oikawa K, Kuroda M, et al.Cancer Res.2004, 64 : 3545).また,small interfering RNA (siRNA)を用いたRNA interference (RNAi)によるhWAPLの発現抑制は腫瘍の増殖を抑制したことから,分子標的療法の標的分子になる可能性が想定されている.このような背景から申請者は,本研究課題において,未だ不明なhWAPLの生理学的な機能を明らかにし,また子宮頚癌の進展におけるhWAPLの関与とそれに基づく診断,他の癌におけるhWAPLの関与の有無、そしてhWAPLに対する分子標的治療の臨床応用を目指している.その中で今年度は,染色にも使用可能な抗体を、6種類作成することに成功した.さらに細胞診検体の使用を考慮し、アルコール固定標本でも使用可能な抗体を単離することに成功した。細胞診検体での染色の評価においては、CIN2からCIN3以上の異型病変において、本抗体は陽性所見を示した。したがって本抗体による臨床応用が期待される.一方,分子標的医薬の開発としてこれまでにsiRNAを用いた手法を行ってきた.しかし,安定性の部分で幾つかの問題が指摘されている.そこで,本研究においては,hWAPLを標的にしたmiRNAの単離を行った.昨年度には,コンピューター計算によってhWAPLの3'UTRにおいて標的となるmiRNAを90種類同定した.さらに,このmiRNAを96well plateに固定し,HeLa細胞をトランスフェクションすることで,標的miRNAの同定を行った結果,5種類のmiRNAを同定した.今後このmiRNAを用いた,分子標的医薬品の開発を目指していく.
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