2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクターピロリの胃粘膜感染機構と炎症惹起メカニズムの研究
Project/Area Number |
20390123
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三室 仁美 The University of Tokyo, 医科学研究所, 講師 (80396887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 道永 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80361624)
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Keywords | 細菌 / 感染 |
Research Abstract |
胃粘膜に持続感染を引き起こすヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori,ピロリ菌)は、胃炎、消化性潰瘍、胃MALTリンパ腫、胃がんの原因菌として多くの研究が行われている。本研究では、ピロリ菌による胃炎惹起メカニズムの包括的理解を目指して、本菌と感染宿主との相互作用に焦点を絞り、三つの局面に分けた研究を企図した。 (1)マクロ的解析:感染モデル動物において、ピロリ菌が直接相互作用する宿主細胞群を同定する。(2)胃内のマクロファージ.樹状細胞の解析:ピロリ菌による食細胞の機能撹乱と炎症惹起の分子メカニズムを解析する。(3)腸管パイエル板での解析:抗原取り込み器官における菌体宿主相互作用を解析する。 平成21年度は下記の成果を得た。 (1)マクロ的解析:前年度に作製した蛍光タンパク質発現するピロリ菌をin vivo動物感染実験に供した。しかしながら、主要な病原因子であるIV型分泌装置に依存した病原性が見られなかった。おそらく変異株の作製過程において、in vitroで馴化したためにin vivoでの病原性が減弱した可能性が考えられた。 (2)胃の反応解析:細胞による菌体の貪食作用と、マクロファージの炎症性サイトカイン産生のそれぞれに影響を及ぼすピロリ菌の因子を同定するために、各種ピロリ菌と、各種培養細胞を用いたin vitroでの感染実験を行い、サイトカイン産生解析を行った結果、ピロリ菌が感染したマクロファージでは、宿主のMyD88に依存して、種々サイトカインのmRNA発現が亢進することが、また、これらの反応には菌体の持つIV型分泌装置に依存した活性と非依存的な活性があることが明らかになった。 (3)パイエル板の反応解析:各種遺伝子改変マウスから調製した樹状細胞と、種々遺伝子改変ピロリ菌を用いたin vitroでの感染実験によって、樹状細胞活性化に関わる宿主因子を一部同定した。
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