2008 Fiscal Year Annual Research Report
極性上皮細胞における麻疹およびインフルエンザウイルス増殖機構の解析
Project/Area Number |
20390133
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
竹田 誠 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 准教授 (40311401)
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Keywords | ウイルス / 感染症 / 微生物 / 麻疹 / 極性細胞 |
Research Abstract |
麻疹は、高熱、咳、全身性の発疹などの症状を呈する人類の代表的な急性ウイルス感染症である。発展途上国においては、時に死亡率が20%を超える重篤な疾患である。他のウイルス感染症と比較して、際立って強い伝染力をもつことが特徴のひとつである。また、患者には-過性の強い免疫抑制が起こり、しばしば細菌などの二次感染が死亡原因となる。われわれは、麻疹ウイルスの受容体結合タンパク質(Hタンパク質)の結晶化に成功し立体構造の解析を行うとともに、麻疹ウイルス野生株の組換えウイルス技術を応用することにより、麻疹ウイルスが二種類の受容体を使い分けることによって、免疫細胞と密着結合(tight junction)を形成する極性上皮細胞の双方に感染することを明らかにした。極性上皮細胞は、生体の外界との障壁を形成する細胞であり、極性上皮細胞への感染力をもつことによって麻疹ウイルスが、効率よく子孫粒子を患者体外に排出すると考えられた。実際に、極性上皮細胞に感染した麻疹ヴイルスが、細胞の頂端膜(apical)側、すなわち管腔側へと選択的に子孫粒子を放出することが分かった。すなわち。このような性質が麻疹ウイルスの強い伝染力の基盤になっていると考えられる。さらに極性上皮細胞に感染するためには、Hタンパク質上の受容体結合部位にある芳香環側鎖をもった3つのアミノ酸残基が重要であることが明らかになった。これらの知見は、麻疹ウイルスの伝播を阻止する治療薬の開発や、より有効かつ安全なワクチン開発につながる知見であると考えている。
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